プロテアソームとユビキチンシステム
タンパク質分解が制御する多様な生命現象を解き明かす
キーワード:細胞内タンパク質分解、プロテアソーム、ユビキチン
がん、老化、免疫

muratapicture.jpg 私は医学部を卒業してからしばらく内科医として主にリウマチ・膠原病の臨床に従事しました。病気の原因もメカニズムも分からず、根本的な治療がないまま苦しむ患者さんにあまりに多く接し、当時の医療の限界を痛感したのが基礎研究へ進むきっかけとなりました。大学院入学後に田中啓二先生(現東京都医学総合研究所所長)の門を叩き、まさに勃興期にあったユビキチン・プロテアソーム研究に身を投じ、自らの手で新しい生命現象を解き明かすことの喜びにとりつかれたのが最終的に医者を辞めて基礎研究者となる決定的な体験でした。以来、タンパク質分解が司る基本的生命現象の解明にひた走ってきました。

 応用研究がもてはやされる昨今、もしかして基礎研究は若い人たちには魅力的に映らないかもしれません。しかし、疾患理解の土台となる基礎研究なくして臨床の発展はありえません。私が研究を行っているユビキチン・プロテアソーム系タンパク質分解も、約30年前の発見当時にはその重要性を正確に予見できたものはいませんでした。しかし現在では、私たちの身体にとって必須のシステムであるとともに、がん、神経変性疾患、炎症・免疫疾患、老化をはじめとした様々な病気へ密接に関わっていることが分かりはじめています。

 この研究分野にはまだ未解明な問題が山積しているものの、研究成果を治療応用に活かす機も熟してきたと感じています。今後も基礎的な課題を追求するとともに、身をもって私に研究の大切さを気付かせてくれた患者さんに恩返しが出来るような努力をしていきたいと考えています。