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2017/12/13 (Wed)
基礎有機化学教室の内山真伸教授が、JT の金澤純一朗研究員(本学卒業生)らのグループと共同で、創薬化学における生物学的等価体 (bioisostere) として近年注目を集めるビシクロ [1.1.1] ペンタンへの非対称二置換導入法を開発
東京大学大学院薬学系研究科の内山真伸教授は、日本たばこ産業株式会社(JT)の金澤純一朗研究員(本学修士修了)らと共同で、近年の創薬化学において重要な生物学的等価体 (bioisostere) であるビシクロ [1.1.1] ペンタンの直截的非対称二置換化を可能にする、[1.1.1] プロペランの多成分ラジカル反応を世界で初めて開発しました。本研究成果は、2017年11月13日付で米国化学会誌「
Journal of the American Chemical Society」のオンライン速報版に公開されました。
発表論文掲載雑誌名: Journal of the American Chemical Society
論文タイトル: Radical Multicomponent Carboamination of [1.1.1]Propellane
著者: Junichiro Kanazawa*, Katsuya Maeda, and Masanobu Uchiyama*
DOI: 10.1021/jacs.7b11865
論文へのリンクはこちら:
http://pubs.acs.org/doi/10.1021/jacs.7b11865 研究発表の概要近年の創薬化学において、未開拓のケミカルスペースの探索、選択性向上、物性の改善などの様々な理由で、複雑な三次元的構造を有する医薬品候補化合物が増えています。その中でも、ビシクロ [1.1.1] ペンタンは特に注目されている部分構造であり、実際の開発候補化合物に使用されています。しかし、修飾化反応の開発が未発達であったために、限られた置換パターンのビシクロ [1.1.1] ペンタンしか利用できない状況にありました。
今回、本研究グループは、原料である [1.1.1] プロペランの多成分ラジカル反応を開発することで、幅広い置換パターンの非対称二置換化されたビシクロ [1.1.1] ペンタン誘導体を効率的に合成することに初めて成功しました。得られる生成物は、合成化学的に非常に有用であるアミン、ヒドラジンに容易に変換可能であり、医薬品のみならず機能性材料など幅広い産業への応用が期待されます。