国際交流
トピックス
2024/03/18天然物合成化学教室の渡邉歩博士、長友優典講師、廣瀬哲博士、彦根悠人大学院生、井上将行教授が、AIDS根治を志向したチグリアンジテルペンの全合成を達成
東京大学大学院薬学系研究科の渡邉歩 大学院生(研究当時)、長友優典 講師(研究当時)、廣瀬哲 大学院生(研究当時)、彦根悠人 大学院生、井上将行 教授の研究グループは、環縮小反応による三員環形成によりチグリアンジテルペンであるホルボールの全合成を達成しました。続いて、ヒドロキシ基の反応性の違いを利用したアシル化、一重項酸素を用いた位置・立体選択的な酸化、基質の三次元構造の精密な制御によるエポキシ化を組み合わせることにより、ホルボールからアセリフォリンAを含む11種類のチグリアンジテルペンの世界初となる網羅的全合成を実現しました。さらに、熊本大学大学院生命科学研究部の岸本直樹 助教、三隅将吾 教授らの研究グループとの共同研究により、全合成した12種類のチグリアンジテルペンのうち7種類が強力なヒト免疫不全ウイルス(HIV)潜伏感染細胞の再活性化能を示すことを見出しました。そのうちの5種類は、HIV再活性化剤として知られるプロストラチンよりも200から300倍の強力な再活性化能を有します。本研究成果は、2024年3月14日付で、化学分野の総合学術雑誌である[Journal of the American Chemical Society]電子版に掲載されました。
掲載雑誌:Journal of the American Chemical Society
論文題目:Total Syntheses of Phorbol and 11 Tigliane Diterpenoids and Their Evaluation as HIV Latency-Reversing Agents
著者:Ayumu Watanabe, Masanori Nagatomo, Akira Hirose, Yuto Hikone, Naoki Kishimoto, Satoshi Miura, Tae Yasutake, Towa Abe, Shogo Misumi, and Masayuki Inoue*
DOI番号:10.1021/jacs.4c01589
論文へのリンク
発表概要 チグリアンジテルペンはトウダイグサ科およびジンチョウゲ科の植物から単離される天然物です。チグリアンジテルペンは高度に縮環した4環性炭素骨格上に多数の酸素官能基を有しています。本天然物群が示す多様な生物活性のうち、HIV潜伏感染細胞の再活性化能は、HIV感染症である後天性免疫不全症候群(AIDS)の根治戦略の一つである「Shock and kill」アプローチの実現に大きく貢献するため、特に注目を集めています。
今回、本研究グループは、環縮小反応による三員環形成によりチグリアンジテルペンであるホルボールの全合成を達成しました。続いて、ヒドロキシ基の反応性の違いを利用したアシル化、一重項酸素を用いた位置・立体選択的な酸化、基質の三次元構造の精密な制御によるエポキシ化を組み合わせることにより、ホルボールからアセリフォリンAを含む11種類のチグリアンジテルペンの世界初となる網羅的全合成を実現しました。さらに、熊本大学大学院生命科学研究部の岸本直樹 助教、三隅将吾 教授らの研究グループとの共同研究により、全合成した12種類のチグリアンジテルペンのうち7種類が強力なヒト免疫不全ウイルス(HIV)潜伏感染細胞の再活性化能を示すことを見出しました。そのうちの5種類は、HIV再活性化剤として知られるプロストラチンよりも200から300倍の強力な再活性化能を有します。
高度に縮環した炭素骨格の構築と、合理的な酸素官能基導入法を駆使して今回確立された本全合成法は、有機合成化学の発展に寄与します。さらに本戦略の応用により、チグリアンジテルペンを基盤とした多種多様な誘導体の合成が可能となり、「Shock and kill」アプローチを一層推進させる創薬シード化合物の創出が期待されます。
プレスリリースはこちら
掲載雑誌:Journal of the American Chemical Society
論文題目:Total Syntheses of Phorbol and 11 Tigliane Diterpenoids and Their Evaluation as HIV Latency-Reversing Agents
著者:Ayumu Watanabe, Masanori Nagatomo, Akira Hirose, Yuto Hikone, Naoki Kishimoto, Satoshi Miura, Tae Yasutake, Towa Abe, Shogo Misumi, and Masayuki Inoue*
DOI番号:10.1021/jacs.4c01589
論文へのリンク
発表概要 チグリアンジテルペンはトウダイグサ科およびジンチョウゲ科の植物から単離される天然物です。チグリアンジテルペンは高度に縮環した4環性炭素骨格上に多数の酸素官能基を有しています。本天然物群が示す多様な生物活性のうち、HIV潜伏感染細胞の再活性化能は、HIV感染症である後天性免疫不全症候群(AIDS)の根治戦略の一つである「Shock and kill」アプローチの実現に大きく貢献するため、特に注目を集めています。
今回、本研究グループは、環縮小反応による三員環形成によりチグリアンジテルペンであるホルボールの全合成を達成しました。続いて、ヒドロキシ基の反応性の違いを利用したアシル化、一重項酸素を用いた位置・立体選択的な酸化、基質の三次元構造の精密な制御によるエポキシ化を組み合わせることにより、ホルボールからアセリフォリンAを含む11種類のチグリアンジテルペンの世界初となる網羅的全合成を実現しました。さらに、熊本大学大学院生命科学研究部の岸本直樹 助教、三隅将吾 教授らの研究グループとの共同研究により、全合成した12種類のチグリアンジテルペンのうち7種類が強力なヒト免疫不全ウイルス(HIV)潜伏感染細胞の再活性化能を示すことを見出しました。そのうちの5種類は、HIV再活性化剤として知られるプロストラチンよりも200から300倍の強力な再活性化能を有します。
高度に縮環した炭素骨格の構築と、合理的な酸素官能基導入法を駆使して今回確立された本全合成法は、有機合成化学の発展に寄与します。さらに本戦略の応用により、チグリアンジテルペンを基盤とした多種多様な誘導体の合成が可能となり、「Shock and kill」アプローチを一層推進させる創薬シード化合物の創出が期待されます。
プレスリリースはこちら
- 2024/03/18
- プレスリリース 天然物合成化学教室の渡邉歩博士、長友優典講師、廣瀬哲博士、彦根悠人大学院生、井上将行教授が、AIDS根治を志向したチグリアンジテルペンの全合成を達成
- 2024/02/16
- プレスリリース 分子薬物動態学教室の吉開泰裕大学院生、水野忠快助教、楠原洋之教授らの研究グループが、言語AIが多様な化合物構造を学習する過程の特徴を発見
- 2024/02/08
- 受賞 天然物化学教室の森貴裕准教授が第16回井上リサーチアウォード (Inoue Science Research Award)を受賞
- 2024/02/07
- プレスリリース 衛生化学教室の青木淳賢 教授、薬化学教室の大和田智彦 教授らの研究グループが免疫を活性化するGタンパク共役型受容体GPR34のリガンド結合様式を解明
- 2024/01/17
- プレスリリース 蛋白構造生物学教室の浅見仁太 大学院生(研究当時)、清水敏之 教授、大戸梅治 准教授らの研究グループがB型肝炎ウイルスが感染受容体に結合するしくみを解明
- 2024/01/12
- プレスリリース 薬品代謝化学教室の小松徹助教らの研究グループが、1分子レベルの酵素活性計測に基づく膵臓がん患者血液中の酵素活性異常の発見
- 2024/01/09
- プレスリリース 薬品作用学教室の池谷裕二教授が、東北大学と共同で、迷走神経は情動を形成するための脳活動と連動する仕組みを解明
- 2023/12/22
- プレスリリース 東京大学大学院薬学研究科の冨士田壮佑特任研究員、三浦正幸教授、中嶋悠一朗講師らの研究グループが、常在幹細胞と再生特異的な未分化細胞が協調することでクラゲの触手が迅速に再生する仕組みを解明
- 2023/12/21
- プレスリリース 薬品代謝化学教室の栗木優五大学院生、曽川マリー大学院生(いずれも研究当時)、浦野泰照教授らの共同研究グループが、タンパク質分解酵素の働きを視る蛍光分子の新規モジュール型設計法を確立
- 2023/12/07
- プレスリリース 衛生化学教室の近江純平 特別研究員、河野望 准教授、青木淳賢 教授らの研究グループがB細胞リンパ腫の生存能に重要な細胞内リン脂質代謝システムを解明