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2019/08/02

薬化学教室の翟 璐晗(ザイ ルーハン)特任研究員と大和田智彦教授らが、アルツハイマー病に関係していると考えられているアミロイドβの凝集構造の起源について計算化学を用いて解析し、今まで認識されていなかった弱い電子相互作用を疎水性領域に発見


 薬化学教室の翟 璐晗 特任研究員と大和田智彦教授の研究グループは、アルツハイマー病に関係していると考えられているアミロイドβの凝集構造の起源について計算化学を用いて解析しました。アミロイドβは40個程度のアミノ酸からなるペプチドで、疎水性アミノ酸を含み凝集しやすいという特徴があります。その凝集構造はβ—シート構造からできています。研究グループの今回の計算研究で、アミロイドβ鎖内で近接する特定の疎水性アミノ酸の原子間にわずかな量ですが電子の蓄積が存在し、弱い相互作用を形成していること、さらに、アミロイドβが集まってβ—シート構造を作ると、水素結合の他にアミロイド鎖内、アミロイド鎖間で相互作用のネットワークが形成されることがわかりました。本研究成果は2019年7月24日付でScientific Reportsに掲載されました。
 
原著論文: Uncovering the Networks of Topological Neighborhoods in β-Strand and Amyloid β-Sheet Structures, Luhan Zhai, Yuko Otani and Tomohiko Ohwada, Scientific Reports,  doi: 10.1038/s41598-019-47151-2
論文はこちら (Open Access):https://www.nature.com/articles/s41598-019-47151-2
 
 研究グループは、アルツハイマー病に関係していると考えられているアミロイドβの凝集構造を計算化学を用いてQuantum Theory of Atoms in Molecules (QTAIM) 解析を行いました。アミロイドβ42やアミロイドβ40はそれぞれ42個、40個のアミノ酸からなるペプチドで、疎水性アミノ酸を含み凝集しやすくアミロイド線維(fibril)の主成分であることが知られています。アミロイドβはβ—ストランド構造というペプチド主鎖が伸びた構造を取ることで、分子間水素結合を形成してアミロイドβの二量化を起こし、さらに多量化が進行することでβ—シート構造を構築します。アミロイドβの凝集にはペプチド間の水素結合に加えて疎水性相互作用が関与します。疎水性相互作用にはすべての疎水性アミノ酸が寄与していると一般的には考えられてきましたが、研究グループの今回の計算研究では、疎水性相互作用は均一ではなく、方向性を持っていることが提案されました。
 疎水性アミノ酸であるロイシンにおいてアミロイドβの凝集構造を形成する基本構造であるβ—ストランド構造を取っているロイシンでは、側鎖のH原子とペプチド結合のO原子の間に共有結合とは異なる電子の蓄積、すなわち空間横断的なbond pathが見え、ロイシンが取りうる他の構造であるPPII(ポリプロリン2型)構造では、そのようなbond pathは見られません。報告されているアミロイドβ40のβ—シート構造のX線結晶構造から、1本のアミロイドβ鎖の構造を取りだし、疎水性アミノ酸が連続する疎水性コア部分についてQTAIM解析を行ったところ、多数の空間横断的なbond pathが鎖内の近接する疎水性アミノ酸の側鎖間に集まっていることが分かりました。さらに2つのアミロイドβ鎖が水素結合で連結したβ—シート構造をX線結晶解析構造から抽出して疎水性コアのQTAIM解析を行うと、β鎖内はもちろん、2本のアミロイドβ鎖間でも水素結合の他に相互作用のネットワークが形成され、集積を助けていることが推定されました。
 病気の原因と考えられるタンパク質の凝集体の電子構造を研究することによって、凝集に働く相互作用が理解でき、将来凝集を制御する治療薬の創製に役立つことが期待されます。
 本研究成果は2019年7月24日付で東京大学からもプレスリリースされました。
日本語:https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/z0111_00009.html
English:https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/en/press/z0508_00064.html
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