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2020/01/06

薬品代謝化学教室の荻原洲介大学院生、小松徹特任助教、浦野泰照教授らが、緑茶に含まれるカテキンが遺伝子発現に関わるタンパク質の機能を制御する新たな仕組みを解明


東京大学大学院薬学系研究科の荻原洲介大学院生、小松徹特任助教、浦野泰照教授、京都府立医科大学大学院医学研究科の伊藤幸裕准教授、大阪大学産業科学研究所の鈴木孝禎教授、東京大学創薬機構の小島宏建特任教授、岡部隆義特任教授、長野哲雄客員特任教授らは、緑茶に含まれるカテキンが遺伝子発現に関わるタンパク質の機能を制御する新たな仕組みを解明しました。本研究成果は、2019年12月23日付でJournal of the American Chemical Society誌に掲載されました。
 
発表論文
雑誌:Journal of the American Chemical Society
題目:Metabolic Pathway-oriented Screening Targeting S-Adenosyl-L-methionine Reveals the Epigenetic Remodeling Activities of Natural-ly Occurring Catechols
著者:Shusuke Ogihara, Toru Komatsu, Yukihiro Itoh, Yuka Miyake, Takayoshi Suzuki, Kouichi Yanagi, Yusuke Kimura, Tasuku Ueno, Kenjiro Hanaoka, Hirotatsu Kojima, Takayoshi Okabe, Tetsuo Nagano, and Yasuteru Urano
DOI番号: doi:10.1021/jacs.9b08698
論文へのリンク: http://dx.doi.org/10.1021/jacs.9b08698
 
発表概要
 細胞の機能の維持において、必要な遺伝子が必要な場所やタイミングで正しく発現されることが重要であり、この過程はさまざまな因子によって厳密に制御されていることが知られています。そして、このような遺伝子発現を決定するエピジェネティック制御因子の代表的なものに、タンパク質、DNAに「メチル基」という化学構造を修飾する酵素反応があります。近年、このようなメチル基の修飾をおこなう酵素の細胞内の活性が、メチル基の供給源となる補酵素‐アデノシルメチオニン(SAM)の細胞内濃度によって制御されることが明らかになっており、細胞内のSAM濃度異常と、さまざまな疾患の関わりの理解に注目が集まっています。
 研究チームは、選択的な酵素反応を利用してSAMを蛍光検出することを可能とする有機小分子蛍光プローブを開発し、細胞内のSAM濃度を変化させる薬剤を効率的に探索する実験系を確立しました。そして、SAM濃度の上昇が病態の悪化に寄与することが示唆されている大腸がんを対象とし、既存の薬剤や生理活性化合物からなる1,600化合物のライブラリの中から、大腸がん細胞のSAM濃度を低下させる薬剤の探索をおこないました。
 その結果、緑茶などに含まれる天然物であるカテキン類が、大腸がん細胞のSAM濃度を大きく低下させることを発見しました。このメカニズムについて詳細に調べたところ、カテキンが、大腸がん細胞が発現する薬物代謝酵素の一種であるカテコールメチルトランスフェラーゼ(COMT)によってメチル化される際にSAMを消費することによって、細胞内のSAM濃度の減少を引き起こすことが明らかとなりました。そして、カテキンによるSAM濃度の低下によって、大腸がん細胞におけるヒストンタンパク質のメチル化の低下が起こり、細胞死を起こしやすくなることが確かめられ、カテキンが、COMTの活性を介してSAM濃度を低下させ、大腸がん細胞の悪性化に関わる表現型を制御するという新たな作用の発見に至りました。
現在までに、緑茶や、その主成分であるカテキン類の健康への効果について多くの研究がなされています。カテキンの細胞レベルでの作用として、抗酸化作用、酵素の阻害、タンパク質の化学修飾などさまざまなものが知られている一方で、これらの作用からだけでは、その健康への効果は十分に説明されていません。今回新たに見出されたカテキンによるSAM濃度の低下作用と、これによるタンパク質のメチル化状態の制御作用は、緑茶、カテキンの健康への効果を説明する鍵となる新たな知見を与えるものであると期待されます。
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