国際交流
トピックス
2020/11/18分子生物学教室の衛藤光 大学院生、岸雄介 講師、後藤由季子 教授が大脳皮質と基底核を作り分ける初めのメカニズムを発見
脳が発生する際には、それぞれの部位に存在する神経幹細胞が異なる種類のニューロンやグリア細胞を生むことで部位特有の機能の獲得に貢献します。例えばニューロンには大きく分類して興奮性ニューロンと抑制性ニューロンが存在しますが、大脳においてこれらは発生期に背側と腹側の神経幹細胞からそれぞれ産み出されます。この脳の場所(背腹軸という位置の情報)に従った神経幹細胞の形成においては、大脳の最も背側の領域から分泌されるモルフォゲンのBMPとWntが神経幹細胞を「背側化」し、最も腹側の領域から分泌されるShhが「腹側化」に貢献することがわかっていました。しかし、どのようにして特定の場所の神経幹細胞からのみBMP、Wnt、Shhが発現するのかは不明でした。
今回、東京大学大学院薬学系研究科博士課程3年の衛藤光 大学院生、岸雄介 講師、後藤由季子 教授らの研究グループは、ポリコーム群タンパク質複合体(以下、PcG)に注目してそのメカニズムの一端を明らかにしました。まず、PcGの機能を欠損したマウスを作成すると、腹側の神経幹細胞が背側化することを見出しました。そしてPcGの働きを詳細に解析すると、本来発現するべきでない領域においてBMPやWnt遺伝子の発現をPcGが抑制して、モルフォゲンの発現領域を制限していることが示されました。この成果は、興奮性・抑制性ニューロンのバランスが崩れて発症する自閉症などの精神発達障害の発生メカニズムの解明などにつながることが期待されます。
本研究成果は、米国科学誌Nature Communicationsに掲載されました。
雑誌名:Nature Communications(11月11日オンライン版)論文タイトル:The Polycomb group protein Ring1 regulates dorsoventral patterning of the mouse telencephalon著者:Hikaru Eto, Yusuke Kishi*, Nayuta Yakushiji-Kaminatsui, Hiroki Sugishita, Shun Utsunomiya, Haruhiko Koseki & Yukiko Gotoh*
DOI番号:10.1038/s41467-020-19556-5
論文へのリンク:https://www.nature.com/articles/s41467-020-19556-5
- 2023/01/11
- プレスリリース 蛋白構造生物学教室の坂庭賢太郎博士、藤村亜紀子博士、大戸梅治准教授、清水敏之教授のグループが自然免疫受容体TLR3が多量体を形成して二本鎖RNAに結合した構造を解明
- 2022/12/22
- プレスリリース 天然物合成化学教室の島川典博士、中村柊大学院生、浅井響大学院生、萩原浩一特任助教、井上将行教授が、C19ジテルペンアルカロイドであるプベルリンCの全合成を達成
- 2022/12/12
- 受賞 井上将行教授が2022年度(第64回)有機合成化学協会賞を受賞
- 2022/12/05
- 受賞 生命物理化学教室の上田卓見准教授が2022年度日本核磁気共鳴学会進歩賞を受賞
- 2022/11/07
- プレスリリース 植物RNA編集機構を立体構造から解明 〜制御可能な遺伝子操作技術の開発へ新しい一歩
- 2022/11/03
- 受賞 浦野泰照教授が2022年秋の 紫綬褒章を受章
- 2022/08/05
- プレスリリース 新型コロナウイルスのウイルス形成に必須の膜タンパク質の構造を解明
- 2022/07/19
- プレスリリース 附属創薬機構の小島宏建特任教授と岡部隆義特任教授、長野哲雄名誉教授と東京慈恵会医科大学医学部の奥田賢一講師と金城雄樹主任教授らの研究グループが、黄色ブドウ球菌のバイオフィルム形成を阻害する化合物を発見
- 2022/06/09
- 受賞 第 35 回 独創性を拓く 先端技術大賞「特別賞」を受賞
- 2022/06/06
- プレスリリース 天然物合成化学教室の薛贇唯博士、伊藤寛晃助教、井上将行教授らの研究グループが、天然物グラミシジンAががん細胞の増殖を抑制する仕組みを解明