東京大学大学院薬学系研究科 生体分析化学教室

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研究内容

生命現象は様々な生体分子の働きによって営まれており、生体分子の機能と生体分子間相互作用の解明は生命科学における 重要なテーマとなっています.「1分子蛍光イメージング法や1分子操作法」は、これらを解析するための有効な手段であり、 多分子の平均を測定する従来の生化学的手法では得られない様々な現象を明らかにしてきました. また、1分子検出技術と半導体微細加工技術を融合した分析科学技術の開発にも取り組んでいます.

具体的な研究テーマは以下のとおりです.

生体分子機械の動作原理の解明

1分子蛍光イメージング法や光ピンセットによる1分子操作法を用いてリボソームによるタンパク質合成の調節機構を研究します. これを理解することにより、 将来的には、理論的に機能性タンパク質を設計することが可能になり、 創薬へと結びつけることができると期待されます.

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1分子検出顕微鏡による細胞機能解析

1. 生細胞内mRNAイメージング

生きた細胞内で、特定のmRNAの発現量を定量し、さらに動態を1分子レベルでイメージングすることは、 遺伝子発現の時空間制御を理解する上で極めて重要です.これを実現するため、 細胞内のmRNAの発現と動態を高感度に定量イメージングする方法を開発します. この技術は、 siRNAやmiRNAに代表される機能性RNAの細胞内における機能の解明にも貢献すると期待されます.

2. 生細胞内温度のイメージングとレーザー局所加熱による細胞機能解析

生体分子の機能解析を主とする今日の生物学において、最近、細胞内の温度に注目が集まっています. これまでに、私たちは生細胞内の温度のイメージングにより、細胞内に興味深い温度の変動を発見しました. さらに、人工的に細胞内を加熱することにより細胞機能を操作することで、細胞内局所温度と細胞機能の関連を解析しています. この研究は生物学において新潮流を生み出すだけでなく、発熱を介した細胞機能の操作法として医・薬学的価値の創出も期待されます.

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マイクロ・ナノデバイスによる分析科学技術の開発

1. オンチップ液体クロマトグラフィー

疾病診断や健康診断では、数mLの血液を用いた分析を、数時間かけて行っています. 私たちは血液1滴を用いて数秒で分析が終結するマイクロ分析デバイスの開発を目的とし、研究を行っています. これまでに、マイクロ分析デバイスにおける液体クロマトグラフィーを用いた分離部を開発し、従来の分析装置と比べて、 より高速な生体分子の分離分析を達成しました.分離部以外(前処理部、検出部など)の開発を行うことにより、 疾病の指標となる生体分子の超高速分析が可能となることが期待されます.

2. miRNAによるガンの早期診断法の開発

近年、血液・尿などの体液中に存在する循環型miRNAのプロファイリングにより、 ガンをはじめとする様々な疾患の進行度・予後に関する重要な情報が得られるとの期待が高まっています. 私たちは循環型miRNAのプロファイリングを実現するマイクロアレイ法の開発を行っています.

3. マイクロドロップレットによる分析科学

3-1. ペプチドリガンドの分子進化とスクリーニング

ペプチド、タンパク質、核酸などの機能性生体分子が自然界で創出されてきた過程を実験室内で高速に行うことで、 新たな機能を有する生体分子の創出、あるいは生体分子の性質を改変することが可能となります. 私たちはこの過程の迅速化・簡便化を目指し、マイクロメートルサイズの油中水滴(マイクロドロップレット)を利用した 進化分子工学的手法(in vitro compartmentalization法)の改良を行ってきました.これを利用し、 タンパク質の機能改変およびGタンパク質共役型受容体作動性ペプチドリガンドの創出を行っています.

3-2. 難培養性微生物からの新規酵素遺伝子の取得

環境中の99%以上の微生物は、現在の技術では培養が困難な微生物(難培養性微生物)とされています. 難培養性微生物が産生する酵素は、新たな酵素資源として非常に大きな可能性を秘めています. 私たちは、環境中に豊富に存在する酵素資源への効率的なアクセスを実現する方法として 「環境中の微生物を培養することなく見える化し、酵素遺伝子を取得する方法」を開発しました. これを利用し、新規酵素遺伝子の取得を進めています.

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