5. 栄養と腸内細菌による恒常性維持機構

 適度な食餌制限が、様々な生物の健康寿命を延長することが知られている。栄養による組織恒常性への影響は絶大であるが、その分子メカニズムの本質は不明である。栄養が吸収されるのは腸であり、事実、腸の恒常性は栄養の影響を強く受けている事が知られている。腸は個体の健康を司る組織として様々な機能を持っており、全身の老化過程・寿命の決定に重要な器官である。我々は、栄養素の中でも、アミノ酸であるメチオニンが腸の幹細胞を制御していることを見出している。特にその一次代謝物であるSAMは、翻訳因子のメチル化修飾を介して腸幹細胞の活性を制御している事がわかってきた。
 このような単一の栄養素による組織恒常性、そして老化の制御はまだまだ不明な点が多く残されているため、様々な角度から研究をおこなっている。興味深いことに、発生過程における栄養や環境ストレスが、何らかの形で個体に記憶され、成体の生理的な状況や老化過程に影響する可能性が示唆されている。このような仮説は、DOHaD(Developmental Origins of Health and Disease)と呼ばれ、注目されている。ショウジョウバエを使った研究から、発生中の栄養制限や酸化剤の摂取が成体の代謝を変化させ、寿命を延長する事が明らかになって来た。驚くべきことに、酸化剤の摂取は、腸内細菌組成を不可逆的に変化させ、それによって寿命を延長させることが分かった。現在、栄養や腸内細菌を起点とした老化・新規DOHaD機構の解明を目指している。

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References
Obata, F., Tsuda-Sakurai, K., Yamazaki, T., Nishio, R., Nishimura, K., Kimura, M., Funakoshi, M., and Miura, M. Nutritional control of stem cell division through S-adenosylmethionine in Drosophila intestine. Dev. Cell 44, 741-751, 2018. doi.org/10.1016/j.devcel.2018.02.017
Obata, F., Fons, C.O., Gould, A.P.:Early-life exposure to low-dose oxidants can increase longevity via microbiome remodelling in Drosophila. Nat. Commun. 2018 Mar 7;9(1):975. doi: 10.1038/s41467-018-03070-w.








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