| 役に立つ(かも知れない)薬(にちょっと関係した)話(3) |
| 薬剤師が足りない? 薬学部教育の行方 |
| 2003.8作成 |
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薬剤師募集という求人広告をよく見かけます。薬剤師はそんなに不足しているのでしょうか?また、薬剤師の養成教育を充実させるために薬学部の教育年限を6年間にしようという動きがあり、それに呼応するかのように多くの薬学部や薬科大学が新設されようとしています。薬学部は将来どうなるのでしょうか?これから薬学部を目指す人にとっても我々にとっても大きな問題です。今回は、これらの問題に焦点を当てて私の考えを述べます。 |
1.日本の薬剤師数平成12年末現在の日本における薬剤師の数は21万7477人(厚生労働省の統計)であり、医師の数が約25万6千人であることを考えると、決して少ない数字ではありません。いや、むしろ多いくらいです。しかも、毎年9000人近い人が薬剤師国家試験に合格しています。平成15年の第88回薬剤師国家試験では10,850人が受験し8,802人が合格しています。ちなみに医師国家試験は8,551名が受験して、7,721名が合格しています。 しかし、約22万人いる薬剤師がすべて薬剤師として働いているわけではありません。病院・診療所、薬局で働いている人、つまり薬剤師の資格を必要とする職業に就いている人は約三分の二です(右図)。薬学教育協議会の調査では、2001年3月に薬学部を卒業した者のうち、薬剤師として働くと考えられる薬局や病院・診療所に就職した割合は、40.3%にしか過ぎません。一般販売業を含めても47.2%です。これに大学院に進学した後にこれらの職業に就いた者(大学院修了者の27%。日本薬学会の統計)を加えても、全体としてせいぜい53%程度です。つまり、薬学部を卒業しても、結果的に半分は薬剤師として働いていないことになります。ちなみに、平成12年末の医師数は255,792人で医師として臨床ではない職に就いている人(大学の基礎系の教官、研究所勤務、大学院生など) は僅か9,689人です。つまり、医師の場合には資格を持った人の96%が医師として働いており、この点が薬剤師と大きく異なります。 |
| 2.薬剤師が不足している職場 それではなぜ薬剤師が不足しているのでしょうか?薬剤師の求人を見てみれば分かります。チェーン薬局や過疎地域の薬局となります。大手チェーン薬局の充足率は3〜4割程度であり、慢性的に薬剤師が不足しています。さらに大手チェーン薬局は売り上げを伸ばしており、店舗数の増大や営業時間の延長を行っているので、薬剤師不足は続くと思われます。また、厚生労働省の統計によれば、2001年の保険薬局数は4万8252軒で10年連続で増加しているそうです。医薬分業率が50%を超え保険調剤を行う薬局が増えたことが原因と思われますが、チェーン薬局に比べれば薬剤師の充足率は問題になりません。 薬学部を卒業して薬剤師にならない人が半分いるのですから、この人たちがチェーン薬局や過疎地の薬局に就職すれば問題は解決しますが、全く人気がありません。過疎地域から都会に人々が集中する傾向は薬剤師だけに限りませんので、国全体として考える必要があります。チェーン薬局の人気が低い理由は、コンビニに就職したのと大して変わらず、せっかく身につけた専門的な知識や経験を生かす機会が少ないからです。チェーン薬局の店頭に置かれている品物は、医薬品ではなく、洗剤、日用雑貨、化粧品、健康食品、特売品等です。消費者もこれらの商品を安く買えることを期待し、チェーン薬局で薬剤師に服薬指導をしてもらおうと考える人は少ないでしょう。薬剤師の給料は他の人よりも多いので、経営者としてはそれなりの仕事(例えば店長)を期待します。そうなると、医薬品の知識よりも、いかに効率よく商品を配置して販売するかとか万引きをいかにして防ぐか、などの事柄が重要になってしまいます。「えーっ コンビニで薬を売る?」でも述べましたが、これらの販売形態の薬局は、薬剤師常駐を義務づけた薬局ではなく、コンビニと同じような医薬品販売店となるべきです。 保険調剤を行う薬局は医薬分業率の増加とともに増えてきましたが、医薬分業率は70〜80%で頭打ちになると見られ、今までのような勢いで扱う処方箋が増えることは考えられません。 |
| 3.増え続ける薬科大学・薬学部 文部科学省の強い指導がなくなったので、要件さえ満たしていれば薬科大学や薬学部の新設が容易となり、全国各地で薬学部新設が相次いでいます。今年4月には就実大学(岡山市)、九州保健福祉大学(宮崎県延岡市)が薬学部を開設したのに続き、2004年には日本薬科大学(仮称、埼玉県伊那町)、千葉理科大学(仮称、千葉県銚子市)、武蔵野大学(東京都西東京市)、2005年には国際医療福祉大学(栃木県大田原市)などが開設を予定し、薬学部新設ラッシュの様相を呈しつつあります。日本薬剤師会や日本私立薬科大学協会などは、こうした増加に反対を表明していますが、日本全体として規制緩和の方向に動いており、この流れは止まらないと思われます。 薬学部新設計画が増えている理由としては、大学経営者にとっては、学生の確保が容易で、学校の特色が出しやすいなどといったメリットが考えられます。特に、少子化で全体の学生数が今後減ることが予想されるので、学生数の確保は死活問題です。入学する学生の立場から見ると、不景気なので技術を身につけて資格を取りたいとか、薬剤師の需要が高い(2で述べたように見かけ上に過ぎないのだが)、ことなどから、薬学部に入学を希望する人は相変わらず多い状況です。このままでは、近い将来に、毎年15,000人が薬学部を卒業するようになると予想されています。どう考えても、多すぎますが、今のままでは誰も止めることが出来ず、薬学部は増え続け、薬剤師の資格を持つ者は増えるが、就職先がないという事態に陥るでしょう。現場の誰もが分かっていることなのに、どうしようもないという不幸な事態になりつつあります。 |
| 4.薬学部の教育年限の延長と6ヶ月の実務実習の問題点 医療チーム(医師、看護師、薬剤師)の一員として貢献するためには現行の四年間の教育では不十分であり、6ヶ月の実務実習を加えて医学部と同様に6年制教育にすべきだという悲願にも似た要望があり、次第に6年間の教育という方向に動きつつあります。高度な医療に貢献するためには現状の薬剤師国家試験に合格しただけでは不十分であり、明日から現場に立つとしたら、実践的な実務教育が必要だという考えです。また、医師に比べて、とかく低い地位にしか見られない薬剤師の社会的地位を向上させたいといった思惑もあります。但し、病院実習については現状で全く行っていないわけではありません。意外に思う人が多いかも知れませんが、東京大学薬学部では卒業生が薬剤師としてほとんど就職していないにも拘わらず、他大学に比べても遜色ない、あるいはむしろ優れた病院実習を他大学に先駆けて充実させています。製薬企業、研究所や大学で研究者の道を選ぶ卒業生がほとんどですが、彼らにとっても、医療の現場を知ることが非常に重要であると考えているからです。 それでは、6ヶ月の実務実習を加えて、薬学部教育を6年間に延長すべきでしょうか? 「実務実習を6ヶ月間行う必然性が示されていない」ことは大きな問題です。議論のスタートから常に6ヶ月という期間だけが主張され、中身については未だに明確なカリキュラム等が示されていません。現状のように、実習内容が学生の面倒を見てくれるように依頼した病院や薬局任せでは困ります。大学側はお願いして実習をさせてもらうという弱い立場なので、その内容について強く主張できないし、カリキュラムを作ったとしても実践する担保がとれないということでしょうか。習得すべき技能や実践知識が先にあり、そのために6ヶ月必要だというのならば分かり易いのですが・・・。病院や薬局で何ヶ月も何を習うのでしょうか?薬剤師の実際の仕事を体験するには、薬剤部と各診療科をくまなく回ったとしても数週間で十分だと思います。学生が大変なだけではなく、病院や薬局で働く薬剤師は本務の他に学生の面倒を見なければならないのです。実習は、何ヶ月行ったかではなく、何を身につけたか(=到達目標の達成)で決められるべきです。東大生を例にすると怒られるかも知れませんが、彼らの能力は高く、一日の実習で理解し身につける量は非常に多いと感じています。彼らに6ヶ月の実習を強要しても、学ぶこと(薬剤師から見れば教えること)が直ぐに無くなってしまうでしょう。 もし、薬剤師として現場で働いている人に比べて薬学部の教育が不十分であるとするならば、彼ら(現場の薬剤師)が卒業してから身につけなければならなかった知識・技能を明らかにし、それを教育すべきです。しかし、それが単に経験不足というのならば、就職した後に見習い期間を設ければ良いだけのことです。もし、現在薬剤師として現場で働いている人が能力不足であり、高い能力の薬剤師を養成するために薬学部の教育を充実すべきだとするならば、新しいシステムで新卒者が出る10年先まで待つよりも、現在働いている薬剤師の再教育を一刻も早く行うべきです。そうでなければ社会に対して全く無責任ということになります。 実習の内容云々ではなく、実際問題として看過できない点があります。「高度な薬剤師教育を必要とする人(=需要)は、現在の薬剤師数や薬学部の定員から見れば一部だけである」ことです。病棟で医師、看護師と一緒に医療チームとして働くことが必要な人(いわゆる病棟薬剤師)の数は限られています。大きな病院では院外処方が増え、薬剤師の窓口の仕事が減り、病棟へと活躍の場がシフトしつつあります。この点が医師と対等なレベルの薬剤師が必要ということで教育年限延長を主張する人の根拠だと思われます。しかし、病院経営にとって経費削減が緊急かつ重要な課題であり、せっかく医療チームの一員として病棟に進出した薬剤師は減らされても増えることはないと思われます。病棟薬剤師は全体から見ればほんの一握りの存在で、これから需要が増えるとは考えにくい存在です。調剤薬局で働く薬剤師はどうでしょうか?院外処方箋はこれからも増加すると思われ、需要が高まりそうです。処方箋のチェック(最大使用量や併用薬など)、薬歴の管理、調剤、患者への説明などが主な仕事となりますが、これからはカルテや処方箋の電子化が進むことが予想されます。経費削減や増大してきた医療訴訟に対処するためにも必然的な流れです。また、健康保険証がIC化する方向で進んでいます。そうなると処方箋のチェックや薬歴管理などのうち、一般的なチェックなどは病院・診療所や薬局のコンピューターが正確に行えるようになり、疑義のある処方箋そのものが減ると予想されます。つまり、全体として仕事量は増えるかも知れないが、大部分はコンピューターの中で行われ、薬剤師が関与しなければならない仕事はむしろ減ることになるでしょう。既に、薬の調合といった仕事が過去のものとなりつつあるように、これからの薬剤師は情報提供や情報収集が重要な業務の一つになります。個々の能力も大切ですが、ネットワークシステムの構築などでかなりの部分がカバーされることになります。チェーン薬局など調剤をほとんど行わない薬局の場合を考えてみましょう。医薬品販売は規制緩和の方向で動いており、コンビニなどの一般の小売店で販売する医薬品が増えるでしょう。全体の販売量は変わらないと予想されるので、薬局の売り上げは確実に落ちます。また、薬剤師の存在意義をあまり感じているとは思えないチェーン薬局の経営者は、薬剤師の常駐を必要としない一般小売店化を図ると思います。つまり義務的な配置のための薬剤師需要は大幅に減るでしょう。 |
| 5.薬剤師の需要予測と薬学部の将来 高度な知識と技能を必要とする薬剤師が何人必要になるかについては誰も正確に答えられないと思いますが、現在薬剤師として働いている全員(約14万3千人)と仮定してシミュレーションをしてみます。年齢分布で一番多い20代、30代と40代の薬剤師はそれぞれ、32,071人、34,370人と37,770人です。一年間に換算すると、3400〜4000人ということになります。前述の状況を考えるとこの数字も将来の予想としては多過ぎることは明白です。現状は、毎年約9000人が薬剤師国家試験に合格していますから、半分以上は必要ないということになります。さらに薬学部の卒業生が15000人になれば、実に三分の二の1万人が薬剤師として就職できないことになります。また、現在、病院・診療所で働いている薬剤師だけが高度な知識と技能を必要とする病棟薬剤師として医療チームに参加すると仮定した場合には、必要人数は僅かに年間1200〜1700人です。この場合には、9割が無駄ということになります。医学部は新設が抑制され医師数が劇的に増えることは考えられず、また、前述のように医師の資格を持っている人はほとんど医師として働いています。薬剤師と同様の計算をしてみると、医師国家試験の年間合格者は必要数の1〜2割増ぐらいではないかと推察されます。国家試験をパスすれば医師としての地位がある程度保障されているわけで、薬剤師とは根本的な違いがあります。 せっかく高度な薬剤師教育を行ったとしても大半の学生は薬剤師になれないのでは、全体として無駄な教育を受けたことになってしまいます。大半の学生は薬剤師を目指して薬学部を卒業しても、結果的に薬剤師以外の職業に就かざるを得ないということです。薬剤師としての就職が狭き門となると、買い手市場になり、悪条件でもやむを得ず就職する人が増えるため、給料や労働時間などの待遇は悪くなるでしょう。そうした状況でも、現場の薬剤師は薬学部生に対して6ヶ月の実務実習を行ってくれるでしょうか?薬剤師の社会的地位向上を目指す人にとっては、全く逆のことが起こることが予想されます。 さらに皮肉なことに、実践的で明日からでも薬剤師として現場に立てるという薬剤師養成教育に特化すれば特化するほど、大半の学生にとっては役に立たないものになってしまいます。せっかく知識や技能を身につけても、大部分の人が薬剤師として活かせないとなると学生の勉学意欲は大幅にそがれてしまうでしょうし、教官側の意欲も低下します。延長した2年間の教育が少なく見積もっても半分の人にとって無駄となれば、将来性豊かで伸び盛りの若者の2年間という貴重な時間と学費が失われることになります。国家的に見れば、多大な損失で、10000〜20000人x年の生産力が無駄になってしまいます。6ヶ月の実務実習が単に「半年間の見習い」だったら、就職が決まってから行えば、無駄が回避できます。 一つの対策として「国家試験の難度を高めて薬剤師の数を減らす」ことが考えられます。しかし、それは単に就職の難しさが国家試験合格の難しさに置き換わっただけで、大半が無駄な教育になることには変わりありません。薬剤師の資格が6年間の教育を受けなければ得られず、さらに国家試験合格が難しくなって価値が高まれば、今まで資格を取りながら薬剤師として就職していなかった人がそれを使って就職しようとすることが容易に予想され、就職難という事態はさらに悪化するでしょう。 結局は、薬学部を目指す学生が減り、10年後には薬学部・薬科大学の共倒れが始まるでしょう。その事態は現場の誰もが予想していますが、具体策がないのが現状です。当事者は必死に生き延びようとしますが、全体としては滅び行くことは必定です。自然界では餌が少なくなれば適正数になるまで個体数が減って淘汰されるのは仕方のないことですが、人間は叡知があるのですから、何とかしなければと思います。新設大学のためにかき集められた教官も含めて多くの薬学部の教官が職を失うでしょう。でも、経営者はそれほど悲観していないような気がします。薬学部の人気に陰りが出たら、その時に一番人気がありそうな学部に鞍替えすることは容易に想像が出来ます。 |
| 6.卒後教育と基礎教育の重要性 以上述べてきたように、全ての学生に高度な薬剤師教育をする必要はありません。医師と同じ6年間の教育をしなければ薬剤師の社会的な地位が絶対に向上しないと考えている人は納得しないでしょうが、実際的なことを考えたら、現在既に働いている薬剤師を再教育する方が社会的な無駄が無く最もスムーズに行くと考えます。現状の議論では6年間の教育を受けた薬剤師と従前の薬剤師の資格に差をつけないという方向なので、従前の薬剤師に対する卒後の再教育を充実させることは必須です。 薬学部は薬剤師以外の多様な薬の専門家も輩出してきたことを忘れてはいけません。薬学部の卒業生の半分が薬剤師として働いていないということは、それだけの社会的な需要があるということです。製薬企業からは、理学部や工学部などではなく、薬学部で専門教育を受けた薬の専門家を研究者として雇用したいという要望があります。日本薬学会の統計から推測すると全国の薬系大学卒業生の20%(大学院経由も含む)が製薬企業に就職しており、そのうちの半分以上は研究職です。つまり、薬学部を卒業して薬剤師としは働いていない人のための教育を無視してはならないと考えますし、薬学部卒業生が製薬企業、研究所、大学における研究を支えていることは歴然たる事実です。病院や薬局だけでなく、行政、教育、研究、福祉などあらゆる分野に優秀な薬の専門家を輩出することが、薬に対する理解を高め、ひいては薬剤師の地位向上にも繋がると考えます。 実践教育の必要性は分かりますが、「薬局での商品の並べ方の知識」と「有機化学、物理化学、生化学、医療薬学などについて基礎から応用まで講義を受け実習を受けた薬の専門家としての知識」を同列に扱えないことは明白です。現状の知識をいくら丸暗記しても、明日の専門家にはなれません。医療チームの一員として医師や看護師から薬剤師が求められている能力は、病気の知識や治療法(これらは当然医師の方が強い)ではなく、薬の有機化学、分析化学、薬物動態学的知識や薬物相互作用の知識、および薬の最新の知見です。これらは現場の実践的な教育で身に付くものではなく、しっかりとした基礎教育から得られるものです。また、新しい薬についてはどんなに最新の教育を受けても、直ぐに新しい薬や新しい知見が出てくるので、それらを収集し理解できる能力を育てなければなりません。問題点の把握能力や問題解決力も求められます。実は、こうした教育として最も優れていることは、研究をさせ学位(Ph.D.)を取らせることです。頼りない学生でも、2年間さらには3年間の大学院での学究生活を通じて、問題解決能力、論理的思考や展開、プレゼンテーション能力、英語文献を通した最新の知見の収集力、論文執筆能力など見違えるように成長します。彼らが医療の現場に立てば、短時間で職務を把握し、欧米の最新情報を収集し、また自ら世界に向けて情報を発信し、医師や看護師と対等に医療に貢献できることは間違いありません。現状の薬剤師が薬の専門家としての能力に欠け、社会的な地位も低いと感じているのならば、薬剤師の資格の他に学位を必要条件とすればこれらの問題点は一挙に解決します。学位は研究者になるためだけに必要なわけではありません。日本ではあまり評価されていませんが、外国では個人の能力の証明として重要視されています。アメリカのFDAで働く人はほとんどがPh.D.かM.D.を持っていますが、厚生労働省の中でPh.D.やM.D.の資格のある人は稀です。交渉がうまくいかなかったり、日本発の情報が重視されないのは言葉の問題というよりも、最初から見下されていることも一因です。アメリカ社会では能力のある人が学位を持っていないことが考えられないのです。 |
| 7.まとめ 薬剤師の能力向上を目指して6年間教育の動きが進行してきたわけですが、予想しなかった薬学部新設ラッシュにより、現状でも多い薬剤師がさらに余る事態が来ると予想されます。しかし、一度動き出した流れはなかなか止まらず、過剰な学生に対して6年間の高度薬剤師実践教育を行うという、壮大な無駄がなされようとしています。 薬剤師の能力だけでなく地位向上を悲願として6年制を推進してきた人たちは私のような主張に対して全く耳を貸しません。事態が変わってきていることを踏まえて、皆で冷静に原点に戻って話し合いをすべきでしょう。 将来に禍根を残すようなことになってはいけません。事態が動き始めたので、時間的な猶予はありません。現状でも薬剤師は多すぎるわけですから、6年制に移行する前に薬剤師の数を減らし、能力を高めることをする必要があると考えます。そのためには現在働いている薬剤師の再教育がまず第一歩です。 自然淘汰を待っていたら社会に混乱を起こしますし、多大な犠牲が生じることになります。 それから「とにかく薬剤師の資格を持っていれば何とかなるだろう」と、興味も使命感もないのに薬学部を目指す受験生には、「直ぐに志望校を変更しなさい」と忠告しておきます。但し、東京大学薬学部では世界をリードする研究が行われ、多様な薬の専門家を輩出していることを強調しておきます。 |
| 追記:2003.9.1 本ホームページの掲載と時を同じくして文部科学省の「薬学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」 が8月29日に中間報告書を提出しました。その中では薬学研究者養成の必要性も認め、6年制と4+2年制の並立が提言されています。しかし、薬剤師数が過剰であることは触れられていません。むしろその中では「平成2年と平成12年の薬系大学・薬学部における学部卒業者の進路動向を比較すると、薬局や病院の薬剤師としての業務に就く者の割合が6割以上伸びている」と薬剤師需要が急激に高まっているような表現があります。確かに右図に示すように過去10年間で薬局や病院・診療所で働く薬剤師は全体で見ても6割ぐらい増えています。しかし、前述のようにこれでも有資格者全体から見ると三分の二であり、新卒者の半分です。また、薬剤師数の伸びの中身を見てみるとほとんどが薬局薬剤師であることが分かります。病院・診療所の薬剤師の増加は僅かで1998年から2000年の間には逆に約1000人減少して48000人となっています。つまり「医療チームの一員としての病院薬剤師の役割が高まっている」(中間報告)かも知れませんが、その数は少なく、今後も増えることはないと予想されます。増えている分は扱う院外処方箋が増えた調剤薬局と薬剤師を義務的に配置しているチェーン薬局ということになります。つまり、医療チームの一員として高度な知識と技能を要求される薬剤師は全体の僅か22%です。また、2001年3月に卒業した者の中で病院・診療所へ就職した割合は14.3%で前年より1.6%、5年前より5%以上減少しています。薬学部の卒業生数のデータは文科省のホームページにも見あたりませんが、薬剤師国家試験の新卒受験者数は手元にあった7年前の資料と比べてもほぼ変わらず、割合の減少は絶対数の減少を反映していると考えられます。つまり、これらの全ての数字は、薬剤師は病院・診療所での職を失い、薬局に職場をシフトしつつあることを示しています。院外処方の増加とともに病院・診療所の薬剤師の役割は窓口から病棟へと変わってきており、医療チームの一員として貢献できるチャンスが増えたはずですが、その数が減ってきているのです。もし、その一つの原因が現状の薬剤師の能力不足であるならば、6年間の教育を受けた薬剤師が働き始める10年後ではなく、今働いている薬剤師の能力向上を優先させるべきです。病院経営が厳しくなってきており、病棟薬剤師が削減されないためには緊急に取り組まなければならない課題です。病棟薬剤師養成のために6ヶ月の実務実習を含む6年間の教育は必要だと思いますが、薬学部卒業生の数から見ればほんの一部の人たちです。チェーン薬局は勿論のこと、調剤薬局で働く薬剤師養成としては過剰すぎると思います。どう考えても、調剤薬局に勤務するだけだったら、就職後に半年の見習いをするだけで十分です。薬剤師として働けるかどうか分からない状態で資格を取るためだけに実習を強要されている学生と就職が決まった後の薬剤師を比べたら、後者の方がモチベーションが高く効率的な見習い(実務実習)になることは明白ですし、社会的な無駄がありません。繰り返しますが、薬学部・薬科大学の卒業者数を適正なレベルにまで減らさなければ、日本全体で無駄な教育・訓練を行うことになり、多大な社会的損失をもたらすことになります。 |
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