ウイルス感染に対する防御機構について(背景)

高等哺乳動物は、ウイルスの感染の初期においては自然免疫系を用い、後期においては獲得免疫系を用いてウイルスに対抗する。 自然免疫応答の中でも特に中心的な役割を担うのが、液性因子一型インターフェロン(typeT IFN)を介した応答である。 ウイルス感染が起こり、一部の感染細胞から分泌されたtypeTIFN は自身や周囲の細胞にウイルス複製を制限する活性を与え、”抗ウイルス状態”へと導き、 感染細胞からウイルスを排除する。実際、typeTIFNを受容できないマウスは、野生型マウスに比べウイルス増殖が亢進し、早く死に至ることが報告されている。

また、抗ウイルスの生体防御には、typeTIFN 産生とは別に感染細胞が細胞死を誘導する機構が知られている。 これは、感染細胞を取り除くことで感染拡大を抑制できるからであると考えられている。 従って、感染細胞は自身の生存を犠牲にし、他の細胞や個体の生存を優先するというプログラムを有しているとも考えられる。

typeTIFN 産生と細胞死の誘導という宿主応答は、どちらも感染個体の生存に貢献すると考えられるが、 typeTIFN 産生では細胞が維持されるのに対し、細胞死では文字通り細胞が失われる。従って感染細胞の運命という点では、どちらの戦略を選ぶのかが非常に重要である。 しかしながら、ウイルス感染におけるtypeTIFN 産生と細胞死誘導の使い分け機構が存在するかは分かっていない。

それでは、

Q. ウイルス感染に対する宿主応答の使い分け機構は存在するのか?

もし使い分け機構が存在するならば、

Q. どのようなメカニズムによって制御されているか?
Q. 細胞はどのような状況で宿主応答を使い分けているのか?
Q. ウイルス感染細胞のうち、typeTIFN を産生する細胞が一部なのは何故か?
Q. 細胞死は本当に個体の感染防御に貢献するか?

以上の疑問に答えることで、個々の感染細胞が細胞外から受け取ったシグナルをどのように解釈し、細胞運命に反映させるかを解明する。 それを通じて宿主の感染防御機構の理解に貢献し、感染症の克服を目指す。




(1)ASKファミリーを介したウイルス応答制御メカニズム     
(2)新規翻訳後修飾による抗ウイルス応答分子IPS-1の機能の使い分け
(3)ウイルス感染による細胞死誘導メカニズムの解析