東京大学大学院薬学系研究科
機能病態学教室

Neuropathology and Neuroscience

アルツハイマー病、パーキンソン病、自閉症など
神経精神疾患の病態解明から治療・診断薬開発へ、
そして同時に新しい基礎研究分野を切り拓く

News & Topics

研究室について

私達は主に生化学と分子生物学を用いて、培養細胞と動物モデルの両面から分子・細胞病態研究を進め、新しい技術と新しい創薬標的を同定し、治療薬開発へつながる成果を世界に発信すると同時に、基礎生物学研究に新たな展開を与えることを目標としています。また産学との共同研究を積極的に進め、研究成果の社会実装を目指しています。

研究内容についてはこちら(2017.2.25更新)をご覧ください。

社会連携講座「脳神経疾患治療学」(講座担当:富田泰輔教授(兼務))を7月1日に開設し、バイオジェン・ジャパン株式会社と3年間の共同研究を開始しました。本講座においては東京大学大学院薬学系研究科における最先端の学術的知見と、バイオジェンが培ってきた脳神経疾患治療法の研究開発技術を融合することにより、脳神経疾患に対する画期的な創薬研究に繋げることを目的として研究を進めます。プレスリリースはこちらです。

研究内容に興味を持ち、見学や面談を希望する学部生、大学院生の皆さんは、富田(taisuke@mol.f.u-tokyo.ac.jp、@を半角にしてください)までご連絡ください。また薬学部3年生向けの教室紹介スライドをAbout Usに掲載しています。

2015年度、2017年度五月祭にて、薬学部三年生に研究内容などについてインタビューを受けました。パンフレットに掲載されたインタビューはこちら(2015年度)こちら(2017年度)です。

篤志家の皆様へのご寄附のお願いについてはこちらを御覧ください。

2018.4.23

高鳥助教によるReview "AP180 N-terminal Homology (ANTH) and Epsin N-terminal Homology (ENTH) Domains: Physiological Functions and Involvement in Disease"がアクセプトされました!

2018.4.10

昨年度末にアクセプトされた当研究科有機合成化学教室との光触媒に関する論文について、日経新聞夕刊に掲載されました。詳細についてはこちらを御覧ください。

2018.4.1

2018年度、当教室に新たに3名のラボメンバーが増えました。創薬に繋がる分子及び細胞病態研究、そして新しい基礎生物学を展開すると同時に、神経疾患の予防や治療に向けた、新しい取り組みも始めていきます。引き続きよろしくお願いいたします。なお2017年度の出来事についてはこちらをご覧ください。

最近の研究から

2018年1月8日
新しい論文をEMBO Molecular Medicineに発表しました

近年、脳に存在する神経細胞以外の細胞のうち、その大部分を占めるグリア細胞の一つ、アストロサイトが、神経機能に対してさまざまな影響を及ぼしていることが注目を浴びています。しかしアルツハイマー病におけるアストロサイトの病的意義については不明な点が多く残されていました。今回、我々はアミロイドβを分解する新規酵素kallikrein-related peptidase 7(KLK7)を同定し、脳内ではアストロサイトが分泌していること、またアルツハイマー病患者脳ではその発現量が低下していること、さらに遺伝子をノックアウトしたモデルマウスにおいてはアミロイドの蓄積が亢進することを明らかにしました。加えて、アストロサイトにおけるグルタミン酸シグナルを抑制することでKLK7の発現量と分解活性を上昇させることができることを見出しました。本研究成果はこれまでにアルツハイマー病発症機構において注目されてこなかったアストロサイトを標的とすることで新規治療・予防薬の開発につながることが期待されます。本研究は東京大学大学院医学系研究科、第一三共株式会社、新潟大学脳研究所、理化学研究所脳科学総合研究センターとの共同研究で行われました。プレスリリースはこちら(東京大学)もしくはこちら(AMED)です。プレスリリースのPDFはこちらです。プレスリリースが日本の研究.comに紹介されました。日経新聞ウェブサイト(2018.1.8)、QLifePro医療ニュース(2018.1.11)、日経バイオテク(2018.1.16)に掲載されました。

2017年11月3日
新しい論文をJournal of Neuroscienceに発表しました

Aβの凝集性や毒性を規定するC末端長を選択的に短くする化合物であるγセクレターゼモジュレーター(γセクレターゼ制御薬、GSM)はアルツハイマー病治療・予防薬候補と考えられています。我々はこれまでにフェニルイミダゾール型GSMが活性中心サブユニットであるPresenilinの第一ループ領域に結合することを明らかとしていましたが、今回エーザイ社によって作成、開発されたGSMであるE2012もPresenilinの第一ループ領域を標的領域とすること、更にE2012の相互作用の結果、第一膜貫通領域(TMD1)の膜内位置が上向きに変化することを見出しました。TMD1の膜内位置はγセクレターゼ活性に大きな影響を与えることから(Takagi-Niidome et al., Biochemistry 2010)、GSMがγセクレターゼ活性化薬として機能していることが改めて示され、またGSMのもたらすコンフォメーション変化を世界で初めて明らかにすることができました。本研究はエーザイ株式会社との共同研究の成果です。プレスリリースが日本の研究.comに紹介されました。

2017年4月3日
新しい論文をJournal of Alzheimer Diseaseに発表しました

家族性アルツハイマー病原因分子Presenilinの機能構造解析から、第一膜貫通領域が基質認識に関わっていること、そして特に第88番目のプロリンがその機能に重要であることを報告していました。本論文において様々な遺伝子変異体を人工的に作出し解析する中で、P88L変異が最も強いAβ42産生効果を示すことを見出していましたが、同変異が20代でADを発症された患者様において同定されました。これまで、患者様において見出された遺伝子変異を元に研究を進められてきました。その方向性とは異なり、分子生物学的研究の中から同定された変異が患者様において見出されたことから、本成果はAD発症機構におけるPresenilinの機能解析研究に大きな裏付けを与えるものです。本研究は南カリフォルニア大学  John M. Ringman教授らとの共同研究の成果です。

2016年7月28日
新しい論文をHuman Molecular Geneticsに発表しました

私たちはこれまでに遺伝学的アルツハイマー病発症予防因子PICALMがコードするCALMタンパク質がアミロイドβタンパク質(Aβ)産生を担う酵素γセクレターゼの細胞内輸送および活性を制御することを明らかにしていました。今回、そのメカニズムについてさらに詳細に検討し、CALMのN末端側に存在するANTHドメインとPI(4,5)P2の結合がγセクレターゼ活性制御に重要であることを見出しました。またRare VariantであるI34M変異がPI(4,5)P2との結合を抑制し、Aβ42産生を低下することを発見し、この変異を持つ人はアルツハイマー病の発症が予防されている可能性を示唆しました。またモデルマウスを用いてCALM機能を半減させることでアミロイド蓄積を顕著に抑制することに成功しました。本成果は、遺伝学的予防因子CALMの部分的な機能抑制がAβ蓄積を抑制し画期的アルツハイマー治療となる可能性について、世界で初めて同定したものです。本研究は奈良女子大学大学院人間文化研究科 渡邊利雄教授、医学系研究科 岩坪威教授との共同研究の成果です。

2016年5月9日
新しい論文をHuman Molecular Geneticsに発表しました

遺伝学的アルツハイマー病発症リスク因子BIN1がアミロイドβタンパク質(Aβ)産生の第一段階目の切断を担う酵素BACE1の細胞内輸送および分解を制御することでAβ産生量を規定していることを明らかにしました。BIN1遺伝子の個々人の違いはアルツハイマー病発症リスクとしてApoEについて二番目に強い影響をもたらします。その遺伝子産物であるBIN1は細胞内小胞輸送に関わるアダプター分子であることが推測されていましたが、アルツハイマー病発症メカニズムにおける役割は不明でした。ノックアウトマウス由来神経細胞やRNAiなどを用い、BIN1タンパク質が細胞表面膜からエンドサイトーシスされたBACE1のエンドソームからリソソームへの輸送を制御していること、その結果エンドソームで生じるβ切断効率を変化させること、またBACE1と直接結合していることを明らかにしました。本成果は、遺伝学的なリスク因子として重要なBIN1がアルツハイマー発症機構においてAβ産生に及ぼす影響について、世界で初めて同定したものです。本研究は名古屋大学大学院創薬科学研究科 横島聡准教授、福山透教授、医学系研究科 辻省次教授、岩坪威教授、Lankenau Institute for Medical Research George C. Prendergast教授との共同研究の成果です。紹介記事がUTokyo Research(2016.9.29)へ掲載されました。

2016年4月4日
新しい論文をScientific Reportsに発表しました

Notchはリガンドによる活性化を受けた後、γセクレターゼによって切断を受けて産生される細胞質内領域が転写活性化因子として作用するタンパク分解依存性シグナル伝達機構で、発生・分化制御や幹細胞の維持などに関わっています。一方、成体の中枢神経系においてはNotchが神経可塑性や機能に関わっていることが示されていましたが、そのメカニズムは不明でした。我々は生化学および遺伝学を駆使し、Notchリガンドが神経細胞におけるシナプス小胞タンパクの発現量を上昇させプレシナプス形成を誘導していること、またその効果が興奮性シナプスにおいてのみ観察されることを見出しました。さらに興味深いことに、この現象はγセクレターゼ阻害薬では影響を受けず、cGMP依存性キナーゼPKG阻害薬によって抑制されました。これはNotchが分化の終了した神経細胞においてはγセクレターゼ非依存性の新しいシグナル経路を介してシナプス機能を制御していることを明らかにしたものです。本研究はUniversity of Kansas 西宗裕史准教授、東海大学医学部 穂積勝人准教授、遺伝学研究所 相賀裕美子教授、大阪大学医学部 原田彰宏教授、慶応大学医学部 柚崎通介教授、医学系研究科 岩坪威教授、University of Cincinnati Raphael Kopan教授との共同研究の成果です。

2016年1月27日
新しい論文をThe Journal of Neuroscienceに発表しました

Aβ産生酵素であるγセクレターゼの全体構造については、近年単粒子構造解析によって明らかとなってきました。その中でγセクレターゼが複数のコンフォメーションを取りうることが示され、基質を捕捉し切断を行う過程でダイナミックな構造変化を生じることが推測されています。しかしその詳細は未だ明らかではありません。今回私達は、γセクレターゼの活性中心のサブユニットであるプレセニリンの第四膜貫通領域が特にアルツハイマー病の原因物質であり、毒性の高いAβ42を多く産生する際に大きく構造を変化させていることをを示しました。本成果は、γセクレターゼが毒性分子を産生する特異的な構造変化を世界で初めて同定したものです。この成果に基づき、Aβ42産生のみを抑制する、副作用のないアルツハイマー病の治療薬開発につながることが期待されます。

2015年2月11日
新しい論文をThe Journal of Neuroscienceに発表しました

Aβを産生する酵素であるγセクレターゼは他のタンパク質も切断するはたらきがあるため、単純にγセクレターゼを阻害するだけでは副作用が引き起こされることが示されていました。またγセクレターゼがどのようにして基質を認識しているかは不明でした。今回私達は、γセクレターゼの活性中心のサブユニットであるプレセニリンの細胞外に面している第一ループ領域とカルボキシ末端が、箸のように協調的に基質の細胞外領域を補まえて、活性中心の構造に取り込んでいることを示しました。本成果は、γセクレターゼが基質の膜内配列を切断する上で基質を補まえる分子領域を世界で初めて同定したものです。この成果に基づき、Aβ産生のみを抑制する、副作用のないアルツハイマー病の治療薬開発につながることが期待されます。本研究は医学系研究科岩坪威教授、大阪大学大学院 佐藤毅講師との共同研究の成果です。紹介記事がUTokyo Research(2015.2.20)へ掲載されました。

2014年7月10日
新しい論文をProceedings of the National Academy of Sciencesに発表しました

低分子化合物が、どのようなメカニズムで薬理作用を発揮しているのか、またどの部位に結合しているかについての情報は、創薬におけるラショナルデザインに必須です。今回、私達はアルツハイマー症治療薬として開発されているフェニルイミダゾール型γセクレターゼ修飾薬が、γセクレターゼ活性を阻害するのではなく亢進させることでAβをさらに切断・分解し、結果的にAβ産生を低下させていることを明らかにしました。またその作用部位が、プレセニリンの細胞外領域によって構成されていることを見出しました。この相互作用様式の詳細をさらに明らかにすることにより、新たなアルツハイマー症治療薬のラショナルデザインにつながると期待されます。本研究は薬学系研究科横島聡元准教授、福山透元教授(現、名古屋大学大学院創薬科学研究科)、医学系研究科岩坪威教授、理化学研究所 横山茂之上席研究員、白水美香子部門長、篠田雄大研究員との共同研究の成果です。紹介記事がAlzforum(2014.7.11)、UTokyo Research (2014.7.23)、毎日新聞朝刊(2014.7.31)、医療介護CB news(2014.8.1)へ掲載されました。

2014年3月1日
新しい論文をNature Communicationsに発表しました

アルツハイマー病の発症予防因子CALM(カルム)タンパク質が、アミロイドβタンパク質産生酵素γセクレターゼの細胞内局在を制御していることを明らかにしました。この酵素の活性はpHによる影響を大きく受け、特に酸性環境下で凝集性の高いAβ42を多く産生することを見出しました。CALMをコードしているPICALM遺伝子近傍に存在する一塩基多型がアルツハイマー病発症リスクを13%低下させることが知られており、本研究成果から予防アレルを持つ人ではAβ42産生が抑制されて可能性が示唆されました。今後、CALMの機能のみを抑制する方法を明らかにすることにより、アルツハイマー病の予防法の開発につながる他、PICALM遺伝子多型によるリスク評価とテーラーメード医療につながることが期待されます。 本研究は奈良女子大学大学院人間文化研究科 渡邊利雄教授との共同研究の成果です。
本研究成果に関する東京大学のプレスリリース、本論文に関する日経バイオテク(14.3.1)朝日新聞デジタル(14.3.1)マイナビニュース(14.3.4)医療介護CBニュース(14.3.6)毎日新聞ウェブサイト(14.3.13)の報道については、それぞれリンク先をご覧ください。本研究成果については14.3.3付朝日新聞夕刊、14.3.13付毎日新聞朝刊に掲載されました。

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