東京大学大学院薬学系研究科
臨床薬学教室 富田グループ

Neuropathology and Neuroscience

2014年

2014年1月11日
新しい論文をMolecular Neurodegenerationに発表しました

γセクレターゼの活性中心サブユニットプレセニリンがどのようにしてAβのC末端長を決定しているかについては明らかになっていません。私達は2011年にAβ42産生を変化させるGSM-1がプレセニリンの第一膜貫通領域に結合することを報告しました(Ohki et al., EMBO J 2011)。今回、異なる構造を持ちAβ42産生を上昇させる低分子化合物Fenofibrateも第一膜貫通領域に結合することを見出しました。そしてこの領域と、APP切断中間産物である「長いAβ」の選択的な結合が、Aβ42産生量に影響を与えることを明らかにしました。本研究はγセクレターゼによる膜内配列切断機構の解明につながると同時に、プレセニリンの第一膜貫通領域がアルツハイマー病治療薬候補であるGSMの創薬標的領域となりうることを示しています。本研究は本学大学院薬学系研究科天然物合成化学教室(現、名古屋大学大学院創薬科学研究科)との共同研究の成果です。

2013年

2013年6月11日
新しい論文をBiochim Biophys Actaに発表しました

現在までに膜内配列切断酵素としてSite 2 Protease、Rhomboidそしてγセクレターゼファミリー分子が知られています。いずれも複数回膜貫通型タンパクが酵素であり、一回膜貫通型タンパクを基質とします。そのため、細胞内小胞輸送によってこれらの切断や活性が制御されていることが知られています。膜内配列切断に関する特集号の中で、切断現象を制御する細胞内小胞輸送の機能的連関について、reviewを執筆させて頂きました。

2013年5月7日
新しい論文をPLoS ONEに発表しました

スフィンゴシン1リン酸受容体に対する機能性アンタゴニストであるFY720はフィンゴリモドとして多発性硬化症治療薬として使用されている免疫抑制剤です。私たちはこのFTY720が培養神経細胞においてγセクレターゼ活性を抑制し、Aβ産生を抑制することを見出しました。またその分子機構として、既知のスフィンゴシン1リン酸受容体を介したシグナル伝達機構とは異なることも明らかとなりました。一方、ADモデルマウスに6日間投与した場合、脳内Aβ40量が低下するにもかかわらず、脳内Aβ42量は増加するということが明らかになりました。免疫抑制剤としてのFTY720の薬効を考慮すると、これらの結果はFTY720がAβ産生機構のみならず、神経炎症システムを変化させることで脳内Aβ量を制御しうる可能性を示唆しています。今後さらに詳細な解析を行うことで、新しい脳内Aβレベルの制御方法の開発につながることが期待されます。

2013年8月8日
新しい論文をBiochemistryに発表しました

Leucine-rich repeat kinase 2(LRRK2)は家族性パーキンソン病(FPD; PARK8)の病因遺伝子産物です。現在までに、R1441C/G/H、Y1699C、G2019S、I2020Tの6種類のアミノ酸置換がPARK8の原因となることが知られていますが、そのメカニズムはよくわかっていません。今回私たちは、2次元薄層クロマトグラフィーによるホスホペプチドマッピングを行い、LRRK2の主要な自己リン酸化部位としてThr1348、Thr1349、Thr1357を同定しました。また、Y1699C変異によりThr1357における自己リン酸化が選択的に抑制されること、低濃度のATP存在下において、解析対象外のY1699C変異体を除くすべての変異体が野生型に比して高い自己リン酸化能を発揮することを発見しました。これらの結果から、細胞内ATP濃度が異常に低下した条件下では、FPD変異型LRRK2は野生型LRRK2より高いキナーゼ活性を発揮する可能性が示唆されました。そのような条件下で過剰リン酸化される基質タンパク質の探索から、FPD変異型LRRK2が神経変性を引き起こす分子メカニズムの解明につながる重要な知見です。

2013年6月25日
新しい論文をHuman Molecular Geneticsに発表しました

TDP-43は家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病因遺伝子であり、家族性及び孤発性ALS患者の運動ニューロンや、前頭側頭葉型変性症(FTLD)患者の大脳皮質において、細胞内封入体として蓄積することが知られています。しかし、これまでどのようにしてTDP-43が神経変性を引き起こすか不明でした。私たちはショウジョウバエの複眼や運動ニューロンにTDP-43を過剰発現させることにより、進行性の神経細胞死を引き起こすモデル動物を作出し、家族性ALSに連鎖するTDP-43の変異や、TDP-43を細胞質に局在させる変異は神経細胞変性を増悪させることを見出しました。さらに、TDP-43はDNA/RNA結合タンパク質であることから、TDP-43のRNA結合能と神経細胞死との関わりを検討したところ、RNA結合能を失ったTDP-43は神経細胞死を引き起こさないことを発見しました。これらの結果は、TDP-43がRNA結合を介して神経細胞死を引き起こすことを示すものであり、神経難病であるALSやFTLDの病因解明、根本治療薬開発に重要な手がかりを与えると期待されます。本研究は本学大学院医学系研究科神経内科学教室、薬学系研究科遺伝学教室との共同研究の成果です。

新しい論文がBiochimica et Biophysica Acta (BBA) - Biomembranesに発表されました

膜内配列切断に関する特集号の中で、切断現象を制御する細胞内小胞輸送の機能的連関について、reviewを執筆させて頂きました。

新しい論文がPLoS ONEに発表されました

スフィンゴシン1リン酸受容体に対する機能性アンタゴニストであるFY720はフィンゴリモドとして多発性硬化症治療薬として使用されている免疫抑制剤です。私たちはこのFTY720が培養神経細胞においてγセクレターゼ活性を抑制し、Aβ産生を抑制することを見出しました。またその分子機構として、既知のスフィンゴシン1リン酸受容体を介したシグナル伝達機構とは異なることも明らかとなりました。一方、ADモデルマウスに6日間投与した場合、脳内Aβ40量が低下するにもかかわらず、脳内Aβ42量は増加するということが明らかになりました。免疫抑制剤としてのFTY720の薬効を考慮すると、これらの結果はFTY720がAβ産生機構のみならず、神経炎症システムを変化させることで脳内Aβ量を制御しうる可能性を示唆しています。今後さらに詳細な解析を行うことで、新しい脳内Aβレベルの制御方法の開発につながることが期待されます。

新しい論文がJournal of Biological Chemistryに発表されました

これまでの我々のγセクレターゼに関連する構造活性相関解析の概説を、最近発表されたGxGDプロテアーゼのx線結晶構造解析の解説と合わせてJBCのMinireviewに執筆させて頂きました。

岩坪威教授が第10回高峰記念第一三共賞を受賞しました

"アルツハイマー病におけるβアミロイド形成機構・抑制薬に関する研究並びに画像・バイオマーカーを用いた治療薬の開発研究"により、岩坪威教授が第10回高峰記念第一三共賞を受賞しました。

2012年

新しい論文がJournal of Medicinal Chemistryに発表されました

セクレターゼの単純な阻害は発生・分化にかかわるNotchシグナルの抑制などによる副作用が予見されており、基質認識機構に基づいたラショナルな活性制御化合物の開発が求められています。我々は以前、 アミノ酸と呼ばれる非天然アミノ酸を用いヘリックス構造を固定した ペプチドフォルダマーが強力なγセクレターゼ阻害剤となることを見出しました(Imamura et al., JACS 2009)。今回、フォルダマーを構成するアミノ酸側鎖を体系的に検討し、阻害濃度と基質選択性に関わるアミノ酸のポジションを決定すると同時に、光親和性標識法などのケミカルバイオロジー的手法を駆使して、既知のスルホンアミド型γセクレターゼ阻害剤とは異なるメカニズムによって基質選択性が生み出されていることを明らかにしました。疎水性である膜内配列を加水分解する新奇活性を示すγセクレターゼの切断メカニズムを考える上でも、重要な知見です。 今後このフォルダマーのデザインを改変していくことで、Aβペプチドの産生のみを特異的に抑制することが可能な、基質特異的γセクレターゼ阻害剤の開発につながることが期待されます。本研究は、名古屋市立大学精密有機反応学分野(樋口恒彦教授、梅澤直樹准教授)、名古屋大学大学院創薬科学研究科天然物化学分野(福山透教授、横島聡准教授)との共同研究成果です。

第17回武田科学振興財団生命科学シンポジウムにおいて、M2の山本薫さんがポスター賞を受賞しました!

新しい論文がBiochemistryに発表されました

プレセニリン(PS)はアルツハイマー病発症にかかわるアミロイドβタンパク質の産生や、幹細胞の維持にかかわるNotchを切断する酵素γセクレターゼの活性中心サブユニットです。私たちはこれまでにシステイン残基の特異的化学反応性を利用してPSの構造活性相関を明らかにしてきました。今回、構造生物学的情報に基づいたγセクレターゼ活性制御法のラショナルデザインを目指し、PS1のループ領域に対する特異的抗体9D11を作出しました。そして9D11がγセクレターゼ活性に対する機能阻害抗体として働き、アミロイドβ蛋白の産生を抑制する他、γセクレターゼ活性依存性に増殖を示すがん細胞の生存を抑制することを見出しました。9D11は世界で初めて開発に成功したPSに対する阻害抗体であり、特に第一膜貫通領域のダイナミックなモーションがγセクレターゼの基質切断機構に重要という我々の以前の知見を確認できたものです(Takagi et al., J Neurosci 2010)。これらの情報は、構造情報に基づいたγセクレターゼを標的とする治療薬の開発において重要な知見であると考えられます。

新しい論文がNeuronに発表されました

シナプスは神経活動に応じて結合様式や形を変えることが知られています。シナプス形成の異常は自閉症などの精神性疾患の原因となることが知られており、現在、シナプス形成に関わる分子の特定が盛んに行われています。しかし、いまだ不明の点が多く、特に、神経活動からシナプス形成までの一連の流れについてはほとんど調べられていませんでした。我々は、興奮性シナプス形成に必須の分子であり、自閉症の発症と関連が示されているシナプス膜タンパク質Neuroliginに着目しました。そして、まず興奮性の神経活動によって、タンパク質切断酵素であるプロテアーゼが活性化しNeuroliginが切断を受けること、その結果Neuroliginの量が減少して、神経細胞シナプス形成が制御されるという一連の流れを見出しました。また切断現象の責任プロテアーゼとしてADAM10とγセクレターゼの関与を明らかにしました。  本研究成果は、プロテアーゼによる、シナプス膜タンパク質切断がシナプスの形成と機能を制御している可能性を示した点で重要です。シナプス形成に関わる分子自体が、そもそもどのように制御を受けているのかを調べ、神経活動からシナプス形成までの全体像を初めて明らかにした成果です。今後、シナプス形成に関わる分子ではなく、その量を決めるプロテアーゼが、自閉症治療薬開発の重要な創薬標的分子となりうることも示唆されます。

東京大学のプレスリリースはこちらです。
本研究成果はNeuron掲載誌の「SPOTLIGHT ON」としてトップページに取り上げられ、Neuron公式ツイッターアカウントActiveZoneにて"3 new papers in Neuron related to neuroligin-1 roles at synapses"とツイートされました。
本論文に関する日経バイオテクからの報道はこちらです。
本論文に関するマイナビニュースからの報道はこちらです。
本論文については平成24年10月19日付で日経産業新聞に、平成24年10月23日付で日刊工業新聞に、平成24年10月30日付で毎日新聞と、東京大学新聞に掲載されました。
本論文に関するAlzforumのニュースはSPOTLIGHTとして取り上げられました。
なお本研究を含めた関連研究について、Webinarによるオンラインディスカッションが2012年11月1日行われ、Webinarサイトよりセミナー内容が公開されています。
本研究の日本語での説明がライフサイエンス 新着論文レビューより公開されています。

新しい論文がThe Journal of Biological Chemistryに発表されました。

γセクレターゼはアルツハイマー病発症にかかわるアミロイドβタンパク質の前駆体を切断する酵素です。この切断酵素はプレセニリン(PS)、ニカストリン、Aph-1、Pen-2の4つのサブユニットで構成される膜蛋白複合体ですが、活性中心ポア構造がどのように形成されるかについては分かっていませんでした。今回我々はPSの活性中心ポアの構造が他のサブユニットによって制御されている様子を世界で初めて解明しました(スキーム)。サブユニットの結合によって、PSの活性中心ポア構造内のアミノ酸残基に対する水分子のaccessibilityが減少すること、および各アミノ酸残基間の距離が短くなることを発見し、活性中心ポア構造が空間的に限定されることを示しました。これらの情報は、γセクレターゼを標的とする治療薬の開発において重要な知見であると考えられます。

超早期アルツハイマー病の画像診断・バイオマーカー・臨床指標の確立を目指したJ-ADNIへの取り組みにより、岩坪威教授が2012年ポタムキン賞を受賞しました。

本受賞に関する東京大学からのプレスリリースはこちらです。
本受賞に関するNEDOからのプレスリリースはこちらです。

新しい論文がThe Journal of Biological Chemistryに発表されました

近年、無脊椎動物である線虫C.elegansの神経系がパーキンソン病における神経変性のモデルになりうることが示唆されています。私達は代表的な家族性パーキンソン病病因遺伝子であるαシヌクレインおよび各種変異体を神経系に発現させた線虫を用いて、パーキンソン病脳内で特徴的なαシヌクレインのセリン129位リン酸化の役割について解析しました。その結果、αシヌクレインのリン酸化は自身の膜結合性を低下させることにより、神経保護的に働く役割を持つことを見出しました。本知見はαシヌクレインリン酸化をターゲットとした創薬を指向する上で重要な足がかりになるものと期待されます。本研究は東京女子医科大学三谷昌平教授との共同研究成果です。

2011年

新新しい論文がBiochemical Journalに発表されました

家族性パーキンソン病(PARK8)の病因遺伝子産物leucine-rich repeat kinase 2(LRRK2)は、2量体として機能することが示唆されていました。しかしながら、私たちは、様々な生化学実験の結果をもとに、LRRK2が実際には主に単量体として存在すること、および2量体化はLRRK2の機能に影響を与えないことを明らかにしました。LRRK2の性状に関するこれまでの誤った理解を修正し、さらに詳細な生化学的性状や機能制御メカニズムに迫る足がかりとなる重要な知見です。

新しい論文がThe EMBO Journalに発表されました

我々は世界で初めてγセクレターゼモジュレーター(GSM)の結合部位の同定に成功しました。毒性分子種であるAβ42産生を特異的に抑制するGSMはアルツハイマー病根本治療薬として期待されています。私たちは、このGSMの分子機構を探るため、ケミカルバイオロジーと生化学的手法を駆使し、GSM-1という化合物がγセクレターゼの活性中心サブユニットであるプレセニリンの第1膜貫通領域に直接結合し、アロステリックな構造変化を引き起こすことでγセクレターゼ活性を制御することを見出しました。この第1膜貫通領域とGSMの結合様式の解明は、GSMのラショナルなドラックデザインにつながるものであり、新たな観点からのアルツハイマー病根本的治療薬の開発に貢献するものと考えられます。本研究は本学天然物合成化学教室横島聡准教授、福山透教授ら、米国マサチューセッツジェネラルホスピタルOksana Berezovska准教授、植村健吾研究員らとの共同研究により進められました。

新しい論文がOncogeneに発表されました

我々は世界で初めてNicastrinを標的としたγセクレターゼ活性中和抗体の樹立に成功しました。これまでに報告されたすべてのγセクレターゼ阻害剤はPSを標的分子とすることが示されています。一方、NCTは構成因子の中で最大の細胞外領域を有し、γセクレターゼが基質を捕捉する際に働く「基質受容体」であることが示唆されています。私たちは、このNCTを標的とした新規γセクレターゼ活性制御法のラショナルデザインを目指し、NCTに対する特異的抗体がγセクレターゼ活性に対する機能阻害抗体として働き、アミロイドβ蛋白の産生を抑制する他、γセクレターゼ活性依存性に増殖を示すがん細胞の腫瘍形成を抑制することを見出しました。A5226Aは、γセクレターゼ阻害剤として初めてPS以外の構成因子を作用点とするものであり、その活性阻害機序の解明を通じてγセクレターゼの基質切断機構に新たな知見をもたらすことが期待されます。本研究は東京大学先端科学技術研究センターの浜窪隆雄・児玉龍彦両教授、筑波大学大学院血液内科の千葉滋教授、大阪大学蛋白質研究所の高木淳一教授らとの共同研究により進められました。

新しい論文がThe Journal of Biological Chemistryに発表されました

我々は世界で初めてSignal peptide peptidase(SPP)の三次元構造を明らかにしました。SPPはγセクレターゼの活性中心サブユニットPresenilinと同じ膜内配列切断酵素ファミリーに属し、C型肝炎ウイルスやマラリアの増殖などに関わることが知られている、新規創薬標的分子です。我々はSPPの立体構造の理解を目剤し、単粒子解析による構造解析を行いました。その結果、SPPが4量体構造をとって活性を発揮すること、内部に親水性環境をもつ弾丸様構造をとること、またSPPのN末端領域がその4量体構造の形成に必要であることを見出しました。活性型SPP構造の理解はC型肝炎などの画期的創薬に繋がる可能性があります。本研究は産業技術総合研究所・バイオメディカル研究部門・佐藤主税先生のグループとの共同研究により進められました。

2010年

新しい論文がThe Journal of Neuroscienceに発表されました

我々は世界で初めてリゾリン脂質の一つであるスフィンゴシン1リン酸(S1P)が神経細胞においてβセクレターゼであるBACE1の活性を制御する因子であることを見出しました。S1Pは様々な生理活性を持つことが知られている脂質で、その産生酵素の一つSphingosine kinase2により合成されるS1PがBACE1活性制御に関与していること、またこのKinase活性がアミロイド線維により亢進することや、アルツハイマー病患者脳において上昇していることを明らかにしました。すなわち、アミロイド毒性がS1P産生を亢進させ、BACE1活性が上昇し、さらなるAβ産生を引き起こす、Vicious cycleが想定されました。すなわち、S1P産生・代謝経路の異常がアルツハイマー病発症過程および増悪化に大きく関与している可能性が考えられ、新たな治療薬標的パスウェイとなることが期待されます。
本研究内容はAlzforumに"Lipid Modulator Offers New Route to BACE1 Inhibition"としてfeatureされました。

本研究内容は2010年10月8日付で信濃毎日新聞に掲載されました。

新しい論文がThe Journal of Neuroscienceに発表されました

これまで、γセクレターゼの活性中心サブユニットプレセニリンについてはシステインケミストリーを用いた構造解析法SCAMを用いて活性中心ポア構造の存在を示してきました。今回、世界で初めてプレセニリンのアミノ末端側の第一膜貫通領域の構造解析に成功し、活性中心ポア構造に直接面していることを明らかにしました。そして基質の選択性にも関わっていることをあきらかにしました。さらに阻害剤を利用した解析から、この膜貫通領域が切断過程においてピストン様の上下運動をしていることが示唆されました。これは世界で初めてγセクレターゼのダイナミックな構造変化を示唆した研究成果であり、今後の解析から、γセクレターゼによる膜内配列切断機構についてさらに詳細なメカニズムが明らかになることが期待されます。

第29回日本認知症学会において、ポスター発表"γセクレターゼモジュレーターGSM-1はプレセニリンN末端断片を標的とする"により、富田泰輔准教授が学会奨励賞(基礎研究部門)を受賞しました。

学会ホームページはこちらです。

予防薬研究 酵素にも注目」

セクレターゼ活性阻害・制御薬に関する最新の知見について、2010年10月8日付で信濃毎日新聞に掲載されました

新しい論文がThe Journal of Neuroscienceに発表されました

BACE1はアミロイドβペプチド(Aβ)産生の律速酵素であり、Aβ抑制療法の標的分子として注目されてきましたが、その阻害薬開発は遅れていました。今回、武田薬品工業創薬研究所の福元宏明主席研究員と我々は、経口投与によりADモデルトランスジェニック(Tg2576)マウス脳でBACE1を抑制する低分子化合物TAK-070の開発に成功しました。TAK-070は(R)-6-[(1,1'-biphenyl)-4-ylmethoxy]- 1,2,3,4-tetrahydro-N,N-dimethyl-2-naphthaleneethanamine hydrochlorideというユニークな構造を持ち、BACE1の膜貫通部分に結合することにより、非競合的にBACE1を抑制するものと考えられます。培養細胞におけるAβ産生抑制能は比較的modestであるものの、Tg2576マウス脳でも同程度にAβ産生を抑制し、その効果は慢性投与実験でも保持されました。またTAK-070の投与はTg2576マウスのY-maze, Morris water maze, novel object recognition などの行動試験における異常を改善しました。TAK-070に代表される、脳移行性の高い経口BACE1低分子阻害薬の、近未来における臨床応用がおおいに期待されます。

本研究内容はAlzforumに"Getting to First BACE: BACE1 Inhibition Takes A Step Forward"としてfeatureされました。

2010年度包括脳ネットワーク 夏のワークショップにおいて、当研究室一色君のポスター"Identification and functional analysis of a substrate-specific genetic modulator for γ-secretase cleavage"が包括脳ネットワーク優秀若手賞(神経科学学会賞、審査分野:病態)を受賞しました!

ICAD2010にて、岩坪教授がHenry Wisniewski Lifetime Achievement Awardを受賞しました

免疫染色を用いた老人斑におけるAβ42の存在の証明から、γセクレターゼの機能構造生物学、パーキンソン病におけるレビー小体の精製とシヌクレインの同定、そして近年ではJ-ADNIの臨床研究に至るmultidisciplinaryな功績が認められました。
At AAICAD 2010, the 2010 Henry Wisniewski Lifetime Achievement Award was presented to Dr. Takehsi Iwatsubo. Dr. Iwatsubo is a neuropathologist/neurologist who has contributed to the elucidation of the pathomechanism of human neurodegenerative disorders, especially Alzheimer’s disease, using multidisciplinary approaches. He demonstrated that Aβ42 is the initially and predominantly deposited species in senile plaque amyloid by immunohistochemistry using specific antibodies. He demonstrated that mutations in presenilin genes cause familial Alzheimer’s disease by increasing the production of Aβ42, elucidated the process of formation of γ-secretase complex, and showed that the γ-secretase complex harbors a water-permeable pore through which intramembrane proteolysis takes place. He also developed a method to isolate and purify Lewy bodies from human brains and showed that α-synuclein, a hyperphoshorylated form, is a component of Lewy bodies. He recently lead the Japanese Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative (ADI),; initiated a nationwide longitudinal imaging/biomarker study on MCI and Alzheimer’s disease, aiming at bridging the basic disease neuroscience to the clinic; and worked to develop standard surrogate markers for clinical trials of disease-modifying drugs for Alzheimer’s disease.

新しい論文がBioorganic & Medicinal Chemistry Lettersに発表されました

γセクレターゼ阻害剤はアルツハイマー病の根本治療薬として期待されていますが、細胞の分化・維持に関わるNotchシグナルにも必要なプロテアーゼであるため、その単純な阻害は重篤な副作用を惹起します。我々は新規γセクレターゼ阻害剤の探索を行うべく、PPARγアゴニスト誘導体ライブラリーを探索し、Notchシグナルを保持したままAβ産生を抑制する新規Notch-sparing GSIの同定と開発に成功しました。本化合物は新規治療薬開発のシードとなる他、基質特異的な阻害剤開発にを目指したケミカルバイオロジー研究において重要なプローブとなることが期待されます。本研究は岡山大学宮地弘幸教授との共同研究成果です。

新しい論文がThe Journal of Biological Chemistryに発表されました

γセクレターゼはプレセニリン、ニカストリン、Aph-1、Pen-2を最小構成因子とする膜蛋白複合体です。活性中心サブユニットであるプレセニリンには活性中心ポア構造の他、基質を脂質二重膜内で側方より捕捉する基質結合部位(Initial substrate-binding site)の存在が示唆されています。本研究においてはシステマチックにプレセニリン1(PS1)の膜貫通領域(TMD)を置換してその変異体の機能解析を行う、以前の研究(Watanabe et al., JBC 2005)をさらに進めました。そして各TMDが活性型γセクレターゼ形成過程において果たす役割について明らかにしました(スキーム)。また化合物を利用したケミカルバイオロジーや、システインを用いたクロスリンク実験などを活用し、TMD2とTMD6がPS1の基質結合部位形成に重要であることを明らかにしました。PSの基質結合部位の詳細を明らかにすることによって、基質特異的なγセクレターゼ活性制御、すなわち、副作用の少ないアルツハイマー病治療薬創成につながる可能性があります。
本研究内容はAlzforumに"Divide and Conquer: Structure-Function Victories With Presenilin 1"としてfeatureされました

2009年

新しい論文がBioorganic & Medicinal Chemistry Lettersに発表されました。

γセクレターゼはプレセニリン、ニカストリン、Aph-1、Pen-2を最小構成因子とする膜蛋白複合体ですが、非常に大きな複合体を形成していることなどから、その構成因子には多様性があることが示唆されています。したがってそれぞれ特有のγセクレターゼ複合体を効率よく、穏和な条件で精製することが求められています。また我々は光親和性標識実験による各γセクレターゼ阻害剤と標的分子を架橋して解析を行ってきましたが、その結合部位のために阻害剤と蛋白の高効率精製法の確立が必要でした。今回、私たちは還元条件下で効率よく切断されるニトロベンゼンスルホンアミド官能基を含む新規リンカーの開発に成功しました。今後このリンカーをさらに改変していくことで、各種阻害剤に結合するgセクレターゼ複合体の新規構成因子の同定につながることが期待されます。本研究は、本学天然物合成化学教室(福山透教授、横島聡講師)との共同研究成果です。

新しい論文がCancer Scienceに発表されました

γセクレターゼはアルツハイマー病にかかわるアミロイドβ産生のみならず、細胞の分化・維持に深くかかわるNotchシグナリングに必要な酵素です。近年、Notchシグナルの異常がさまざまながんの発症にかかわることが示されつつあり、γセクレターゼ活性制御によるがん治療法開発が注目を浴びています。今回私たちはγセクレターゼ阻害剤がT細胞性急性リンパ性白血病モデルに有効であることを示し、その分子機構について、がん細胞をアポトーシスに導くcell autonomousな効果と、血管新生に対するnon cell autonomousな効果があることを明らかにしました。本研究は筑波大学千葉滋教授、帝京大学夏苅英昭教授との共同研究成果です。

新しい論文がBiochemistryに発表されました

新しい論文がThe Journal of Neuroscienceに発表されました

ルツハイマー病の病因にはAβペプチドからなるβアミロイドの脳内蓄積が重要と考えられています。共同研究者のSchenk博士は、Aβを接種したアミロイド前駆体トランスジェニックマウス脳でβアミロイドの蓄積が顕著に抑制されることから「Aβワクチン療法」を開発しました。この効果は血液中に産生された抗Aβ抗体によることが示され、現在ヒト化抗Aβ抗体を投与する受動免疫療法の臨床治験が開始されています。しかし、脳の外から投与された抗体が、どのようなメカニズムによって脳内のAβ蓄積を抑制するのかは不明でした。特に、現在治験の進められている抗体のいくつかは、血液中で作用し、脳からのAβ排出を促進する(「シンク効果」)と信じられてきましたが、それを実証する知見はありませんでした。今回私たちは、シンク効果を生じると考えられてきた代表的なモノクローナル抗体266が、脳からAβを引き抜くのとは逆に、脳内に進入して治療効果を生じていることを示しました。アルツハイマー病の脳では、単量体型で産生されたAβが、障害性の高いオリゴマーを経て、アミロイドとして蓄積するものと考えられています。今回の結果は、抗Aβ抗体が脳内に進入して可溶・単量体型のAβに結合、これをオリゴマーやアミロイド等の多量体の形成過程から隔離し、阻害するという新規の作用メカニズムを提起するものです。以上の研究内容については、こちら(PDFファイル)もご覧ください。

新しい論文がThe Journal of Biological Chemistryに発表されました

今回、私たちは世界で初めてモノクローナル抗体誘導体を用いたγセクレターゼ活性制御法の開発に成功しました。γセクレターゼはアルツハイマー病脳に蓄積するAβペプチドの産生を行う膜結合型複合体を本態とする酵素です。その構成因子の一つであるニカストリン(Nicastrin)は大きな細胞外領域を持ちます。今回ニカストリンの細胞外領域に対する新規モノクローナル抗体の樹立に成功し、この抗体を基に単鎖抗体を作出しました。この単鎖抗体を培養細胞に発現させたところ、ニカストリン細胞外領域の糖鎖修飾および構造異常を惹起することでγセクレターゼの不安定化を引き起こし、Aβペプチド産生が抑制されることを見出しました。この結果は、ニカストリンの細胞外領域がγセクレターゼの安定性及び活性に重要な役割を果たしていることを示します。またニカストリンがγセクレターゼ活性を制御する創薬標的となりうることを世界で初めて示しました。将来的には、生物製剤の一つとして着目されている「抗体医薬」によるγセクレターゼ活性の制御法開発へつながることが期待されます。本研究は本学先端研 児玉龍彦教授、浜窪隆雄教授との共同研究成果です。

2009年度米国神経科学会(Society for Neuroscience 2009)のプレス向けメディア資料において、当研究室からの下記演題がHot topicsとして選ばれました!

新しい論文がJournal of the American Chemical Societyに発表されました

アルツハイマー病脳に老人斑として蓄積するAβペプチドの産生にかかわるγセクレターゼは重要な創薬標的分子ですが、その単純な阻害は発生・分化にかかわるNotchシグナルの抑制などによる副作用が予見されており、γセクレターゼの基質認識および切断機構に基づいたラショナルな活性制御化合物の開発が求められています。今回βアミノ酸と呼ばれる非天然アミノ酸を用い、基質となる膜貫通領域を模倣するヘリックス構造を固定したβペプチドフォルダマーが強力なγセクレターゼ阻害剤となることを見出しました。また光親和性標識法などのケミカルバイオロジー的手法を駆使することで、その作用点がγセクレターゼの基質認識部位であることを明らかにしました。今後このフォルダマーのデザインを改変していくことで、Aβペプチドの産生のみを特異的に抑制することが可能な、基質特異的γセクレターゼ阻害剤の開発につながることが期待されます。本研究は、名古屋市立大学精密有機反応学分野(樋口恒彦教授、梅澤直樹准教授)との共同研究成果です。

当研究室大学院生の高木さんが平成20年度第2回学生表彰「東京大学総長賞」を受賞しました!

受賞内容要約:γセクレターゼは、アルツハイマー病の病因タンパク質アミロイドβを作り出す酵素であり、根本治療薬開発においてターゲットタンパク質として注目されている。高木氏は、γセクレターゼの詳細な構造をシステイン置換法(SCAM)と呼ばれる手法を用いて解明し、γセクレターゼ阻害剤の分子機構を明らかにした。この研究成果は、治療薬開発において重要な情報をもたらすものであるとして、国際アルツハイマー病学会において多くの研究者や製薬企業からの耳目を集め、アルツハイマー病研究者のためのネットコミュニティAlzforumにおいて高い評価を得た。このような業績および「意志あるところに道あり」をモットーとする研究姿勢が高く評価された。

2008年

第15回武田科学振興財団生命科学シンポジウムにおいて、当研究室一色君のポスター" Identification and analysis of a substrate-specific genetic modulator for gamma-secretase activity."がポスター賞を受賞しました!

第3回Notch研究会(若手の会)において、当研究室林さんのポスター"The role of Notch signaling in synaptogenesis"がポスター賞を受賞しました!

新しい論文がThe Journal of Biological Chemistryに発表されました。