IC (Intensive Course)

第8回医薬品評価科学講座 Intensive Course 終了のご報告

2010年1月30日、東京大学小柴ホールに於いて、第8回医薬品評価科学講座 Intensive Course(IC)が開催され、多数の参加者を迎えることができました。

医薬品評価の常識・非常識 〜レギュラトリサイエンスの実践〜
日 時 2010年1月30日(土) 10時〜18時
場 所 東京大学 小柴ホール


【はじめに】
医薬品の研究・開発・規制の世界では「都市伝説」、「声の大きい人の意見」、「思い込み」や「思い付き」で医薬品を評価してしまってはいないだろうか。溢れる情報のなかで事実と意見、真実と虚偽、あるいは真説と空説の区別は容易でないなか、組織の内外で議論が噛みあわないまま前例主義にしたがい医薬品を評価してはいないだろうか。
このたびの第8回集中コース(Intensive Course; IC)では、医薬品開発における迷信シリーズ第2弾として、モヤモヤしている3分野(人種差・民族差の考え方、国際的な医薬品開発と企業行動、医薬品安全性の考え方)を取り上げ、常識・非常識を整理したい。レギュラトリーサイエンスを実践するための論理的な考え方のヒントを実際の研究例を通して提供し、フロアと演者の全員で議論しながら、違いの分かる人を目指したい。
今回のICでは本講座の研究成果を主として紹介するため、参加費も費用対効果に優れたレベルとなるよう設定しているが、最終的な判断は参加者の皆様に委ねたい。

【議題・演者】
1)人種差・民族差の考え方 ―事実と「べき論」を分けよう―

新薬承認申請に外国臨床試験データを用いることが多い日本では、人種差・民族差の評価は不可避であり、規制当局もそのための規制を設けてきた。欧米間の人種差・民族差を考慮していなかった欧米の規制当局も第三国のデータの民族差に着目している。そもそもどれだけの人種差・民族差が申請データパッケージに見られているのだろうか。また、どれだけの民族差が承認用量として出力されていて、規制側・行政側の行動がどれだけ関与しているのだろうか。そして果たしてプレーヤーたちは、誰をhappyにするために、何をどのように評価すべきなのか?ここでは、このような疑問に応えられる研究を紹介し、モヤモヤしている事実と「べき論」を分けて、この問題を議論したい。

1−1)申請資料にみる日本人と外国人の薬物動態の違い  福永悟史 (医薬品評価科学・博士課程)

1−2)申請資料にみる日本人と外国人の有害事象発現の違い  小西康司 (医薬品評価科学・修士課程)

1−3)日米の承認用量の違い:どれだけ違うのか、なぜ違うのか  Frank Arnold(医薬品評価科学・博士課程)

1−4)行政科学から見た人種差・民族差の考え方  齋藤充生(国立医薬品食品衛生研究所、武蔵野大学薬学部)


2)国際的な医薬品開発と企業行動
―お客様(日本人、世界の人々)との関係を考える―

医薬品開発のグローバル化のなかで、製薬企業はどのように行動しているのか、および企業はどう行動すべきかを整理する。製薬企業は、お客様の満足する製品を製品化・販売し、自らの利益を最大化するために行動する営利団体とみられることが多い。この目的を効率よく達成するための企業行動の結果、日本における開発時期を諸外国と同じにしたり、遅らせたりすることがある。国内外のお客様はどのようにこれを見ているのだろうか。そして、国民の幸福を最大限にすることを使命とし、かつ、製薬産業を4番目に大きな納税者として持つ非営利団体である日本国は、どのように製薬産業のご機嫌を失わずに効率的に使命を達成しうるのだろうか。このセッションでは医薬品開発に関する今までの企業行動に関する研究を紹介しながら、企業とお客様から見た問題点を明確にし、現実的な解決法について議論したい。

2−1)日本の新薬承認申請の遅れに関係する開発要因
  平井由香 (医薬品評価科学・博士課程)

2−2)新薬の臨床開発および承認審査の国際化とその成果
  石橋太郎 (医薬品評価科学・博士課程)

2−3)企業からみた「お客様」との問題点(仮題)
  小宮山 靖 (ファイザー)


3)安全性の考え方の整理 ―公共工事にならないためには―

医薬品の市販後安全性の管理は、規制当局の使命の一つとして注目されている。世界的な潮流は、承認前からの安全対策計画や、副作用報告義務化に伴い構築される大規模副作用データベースを用いた市販後安全性管理となりつつある。一方、日本には、市販直後調査、再審査制度、再評価制度といった日本独自の安全性対策が既に存在し、添付文書改訂などの行動を日本独自に行ってきた経緯がある。このように既存の方法が確立されているところに、世界的な潮流に乗った新しい規制の試みはには様々な社会的コストが生じるものだが、相加・相乗効果は果たして生まれるのだろうか。安全性に関する日本の行政行動に着目した研究を紹介し、副作用報告制度の国際比較をした上で、PMDAの安全部の活動の現状と将来、副作用データベースを用いた安全性管理の長所や限界について、議論したい。

3−1) 医薬品のリスクとドラッグラグ短縮はトレードオフ!?
  山田 徹(医薬品評価科学・博士課程)

3−2)何が日本の添付文書を改訂させているのか
  高本 幹大 (医薬品評価科学・修士課程)

3−3)Comparison of ADR reporting system of Japan, China, and US
  陳 鋒 (医薬品評価科学・研究員、SFDA)

3−4)PMDAにおける安全性対策の現状と将来の展望
  三澤 馨(医薬品医療機器総合機構 安全第一部)

3−5)大規模副作用データベースってどれだけ有用?(仮題)
  山口 拓洋(東京大学大学院医学系研究科 臨床試験データ管理学)


★ポスター(PDF)はこちら

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