東京大学大学院 薬学系研究科
生理化学教室

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Rabファミリーによる小胞輸送の制御機構

低分子量Gタンパク質はサブユニット構造をもたず、その名称は三量体Gタンパク質に比べて分子量が約20〜30 kDaと小さいことに由来します。ゲノムプロジェクトの進展から、ヒトでは150種以上の低分子量Gタンパク質の存在が明らかとなっており、一群のスーパーファミリーを形 成しています。これらの低分子量Gタンパク質は一次構造の類似性に基づいて、少なくともRas、Rab、Rho/Rac/CDC42、Arf /Arl、Ranと略記される5種類のサブファミリーに分類されます(図1参照)。この中で構成メンバーの数が最も多いRabファミリーは、細胞内の 小胞輸送(メンブラン・トラフィック)系において重要な役割を果たしていますが、当教室ではRab5に対する新しい相互作用因子としてRINファミ リー分子を同定し、それらがRab5に対してユニークな活性化(GEF)と安定化作用をもつことを解明しました(図2)。RINファミリー分子には、 SH2ドメイン、SH3ドメインの結合するProに富む配列(PRD)やRasと結合するRAドメインなどのシグナル伝達に関与し得る複数の機能ドメ インが存在し、そのPRDは、ダイナミンを細胞膜近辺にリクルートしてクラスリン被覆小胞の陥入に関与するアンフィファイシンII(Amph II)と結合します。

図2 小胞輸送系に介在するRab-RINファミリー相互作用

このように、Rab5結合因子として同定した新規RINファミリーは、小胞の出芽と輸送の初期過程において足場 的役割を果たす分子と考えられます。さらに、当教室ではRIN3がフォスファターゼ阻害剤(pervanadate)の処理時に細胞質から初期エンドソームへ移行することを見出し、GEF が機能する部位への局在化とチロシンリン酸化シグナルとを繋ぐ分子基盤についても研究を進めております。  一方、Rab5と相同性が高く、脊椎動物以降にのみ保存されている新しいRabメンバーとして、近年Rab22とRab31が同定されましたが、高等動物での複雑なエン ドサイトーシス機構の制御に向けて、これらのRab5サブファミリーが重要な役割を果たすことが考えられます。我々はこれらRab5サブファミリーの 活性化機構について解析を進め、Rab22やRab31がRINファミリーによって活性化されることを明らかとしました。現在はこれらの成果を背景 に、RINファミリーとRab5サブファミリーが介在する細胞内の小胞輸送、特にエンドサイトーシスの制御機構と細胞機能(インスリン依存性糖輸送体 の局在変化など)、受容体刺激に依存した細胞内シグナル伝達経路におけるRINファミリーの機能解析に向けて研究を進めています。