東京大学大学院 薬学系研究科
生理化学教室

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アティピカルGタンパク質の機能解析

低分子量Gタンパク質には、先に述べた小胞輸送に関わるRabファミリー以外にも多彩なファミリーが存在し、そ の中には、未だに機能が全く不明なものもあります。また、他の多くのGタンパク質とは生化学的性状や組織・細胞内での分布が異なる非典型(アティピカ ル)なメンバーも存在します。さらに、各サブファミリーが担う細胞機能は必ずしも同一ではなく、それらは個別の役割も果たすことが当教室を含む最近の 研究から次第に明らかにされつつあります。当教室では、Ras類縁のファミリーに属すると考えられるアティピカルな新規低分子量Gタンパク質Di- Ras1,2(Distinct subgroup of Ras-family GTPase)、RRP22(Ras-related protein on chromosome 22)、Rheb1,2(Ras-homologue enriched in brain)、さらに既知のArf/Arlファミリーに属するものの新規のサブファミリーを形成するArl8/Gieなどの分子群を単離・同定しました(図3)。  

図3 ユニークな生化学的性状と組織分布を示すアティピカル低分子Gタンパク質ファミリー

多細胞生物種間で良く保存されたDi-Rasは、哺乳動物での発現が神経組織に特異的で、その多くが細胞質内で smg–GDSとヘテ二量体を形成として存在するというユ ニークな特性を有します。またDi-Rasの線虫ホモログ(drn-1)も神経細胞特異的に発現することから、Di-Rasが種間を超えて神経細胞に おいて何らかの普遍的な役割を担うことが期待されています。当教室では、線虫drn-1変異体を用いた解析から、drn-1が神経細胞からのシナプス 小胞の放出機構に関与する可能性を見出しました。また、RRP22は増殖抑制作用を有し、癌原遺伝子であるRasとは対照的に癌抑制遺伝子として機能 する可能性が示唆されています。さらにRhebは、ヒト脳のグリア細胞等に特異的な発現パターンを示し、Rhebを動物細胞に過剰発現すると多層の膜 構造をもつ巨大な小胞が形成されることを見出しました。