東京大学大学院 薬学系研究科
生理化学教室

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マルチ・ドメイン構造を有するGタンパク質

これらのGタンパク質に加えて、最近では低分子量Gタンパク質ドメインと他の機能ドメインを合わせもつユニーク な構造の新奇Gタンパク質に着目した研究も行っています。低分子量Gタンパク質は一般に分子量20〜30 kDaですが、当研究室で同定したRab45は、C末端に存在するRab相同領域に加えて、N末端にEF-handを有するというアティピカルな約85 kDaのGタンパク質です(図6)。 図6 上皮細胞におけるVAC形成への関与が期待されるRab45 私達は極性上皮細胞を用いた解析から、Rab45が主にアピカルリサイクリングエンドソームに局在し、 VAC(Vacuolar apical compartment)と呼ばれる上皮細胞に特有な膜構造体の形成に関与する可能性を見いだしました。VACは極性上皮細胞が脱極性化した際に形成される、アピカル膜蛋 白質を含む小胞の凝集体であり、極性が再形成される際にはエキソサイトーシスされてアピカル膜の速やかな形成に重要な役割を果たすと考えられていま す。私達は、Rab45の過剰発現によりVACの形成が促進されること、及び、極性再形成時のVACの消失や極性形成のタイミングが遅延することを見 いだしました。現在までに知られているRabファミリー蛋白質(ヒトでは60種類以上)の中でRab45は、VACに局在することが示された初めての Rabファミリー蛋白質であり、Rab45のユニークな一次構造を介した膜輸送系が、上皮細胞の極性形成を制御している可能性が考えられます。

繊毛は細胞膜から突出した特徴的な構造体であり、哺乳動物においては多様な組織の細胞に存在し、細胞外環境の感 知や水流の発生において重要な役割を果たしています。近年、繊毛の形成不全や機能異常に起因するBardet-Biedle症候群やJoubert症候群などの遺伝性疾患が報告され、繊毛の形成・機能の制 御機構に関する研究が進展しています。Arf/ArlファミリーGタンパク質に属するArl13bは、そのN末端に存在するArf/Arl相同領域に 加え、C末端にコイルドコイルやProに富む領域をし、その性状はアティピカルです(図7)。 図7 繊毛に局在するアティピカルGタンパク質Arl13b Arl13bが哺乳動物細胞の繊毛に限局して存在し、その局在化には各機能ドメインや膜との相互作用が重要であること、また、Arl13bの発現抑制は、中心体の成熟に影響を与えないが、繊毛形成率を著し く低下させることを見出しました。さらに最近、ヒトArl13bの変異がJoubert症候群を誘起することも報告され、Arl13bが繊毛形成・機 能に重要な役割を果たすGタンパク質であることが示されています。またBardet-Biedle症候群の原因遺伝子産物として報告されている別種の Gタンパク質にArl6もあり、Bardet-Biedle症候群の患者で同定されたArl6の変異は、細胞内のArl6の安定性を低下させ、プロテ アソームにより分解されて発現量が低下することを明らかにしました。