教育概要

教育概要

 分子薬物動態学教室では、薬学部の講義として、5学期、6学期にそれぞれ「薬物動態制御学」のI, II、7学期に「製剤設計学」を担当している。「薬物動態制御学」では、標的臓器に選択的に薬を分布させるドラッグデリバリーシステム(DDS)の考え方、薬物動態を制御するための機構(代謝、輸送、結合)の理解、モデルを用いて定量的に薬物動態を記述する基礎を中心に講義を行っている。「製剤設計学」では、DDSの基盤となる剤型設計の技術、応用について講義している。いずれの講義においても、知識の取得は必要最小限度に抑え、動態学、製剤設計学の背景にある薬効の増大、副作用の低下との関連について理解させること、医薬品の開発・設計過程におけるこの学問領域の重要性を理解させる事に中心をおいている。

 大学院講義としては、「製剤設計学特論」を担当している。薬物動態学、DDS領域の最先端を、当研究室の教官が中心となり、さらに数人の外部講師にも依頼して講義が行われる。先端領域の研究がどのようなアイデアのもとで生まれてくるのか、研究を発展させるにあたっての知的興奮が伝わることを念頭においている。講義は、基礎薬科学としての薬物動態学と、医薬品の探索・開発における動態学・DDS学の必要性、有用性について、ほぼ同様のウェートをおいて行っている。

 研究の項で述べたように、分子薬物動態学教室では、薬物動態学、DDSの領域において、最先端の研究を行っている。特に、薬物動態を支配する肝臓、脳、小腸、癌におけるトランスポーターの研究、薬物動態特性を試験管レベルから個体レベルに再構築する研究においては、世界をリードする研究を展開している。教室に所属する大学院生は、これら研究に参加することによって、研究手技の取得、研究を自分で展開させることができる能力の獲得に向けた訓練を受ける。実験動物の取り扱いに関する基本、灌流組織の取り扱い、in vitroでの単離細胞、培養細胞、膜ベシクルの取り扱い、分子生物学、細胞生物学的手法、トランスポーターの遺伝子変異の検出法、などを学ぶことを目標とする他に、得られたin vitroデータとin vivoデータを連結させるために数学モデルに基づいた解析、コンピューターの使用法などについても訓練をうける。教室のセミナー(大学院生として必修のセミナー)では、研究報告(コロキウム)、文献を基に考え方を訓練するセミナー(バイオセミナー)が各々、週1回のペースで行われている。コロキウムは、1人40-50分の発表、質疑応答をすべて英語で行っており、研究の目的を明確にすること、世界的にどの位置にありどの点にオリジナリティーがあるかを明確に意識させること、その解明のためには何が必要であるかを自分で発見させるような教育をしている。大学院生による研究成果は、研究発表の項にあるように英文で海外の学術誌に報告する他、院生には自らの研究の位置づけを明確にさせるために、積極的に総説などの執筆の機会を与えている。国内では、薬学会、薬物動態学会、薬剤学会、肝臓学会、DDS学会、国外でも、米国薬学会(AAPS)、世界薬学連合(FIP)、世界薬物動態学会(ISSX)、アメリカ肝臓学会(AASLD)などで発表させる機械をできるだけ多く与え訓練すると共に、外部研究者の評価を仰いでいる。当研究室には、年間10名程度の外国研究者の訪問があり、半日〜1日かけてセミナーを行う。大学院生にもプレゼンテーションの機会が与えられることも多い。これら訓練を通して、大部分の大学院生においては、修士卒業の頃には、英語でのプレゼンテーションを大きな負担と感じなくなるようになる。現在、この学際的研究領域の研究者として、広い視点を持った研究者が必要とされる。その為に、どのような取り込みをしてほしいかについて、杉山自身の願いを、「21世紀に向けて ?若手研究者への提言」と題した小文にまとめた。これは、当研究室のホームページ上(http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~sugiyama/)に掲載している。

 最近の教室出身者の多くは、国内の大学、製薬企業などで、薬物動態、製剤の領域で研究・教育者として、また、創薬開発業務に就いている。国外の製薬企業で活躍しているものもいる。また官公庁などで活躍している人材も多い。