渡邊グループ2016

メンバー

渡邊謙吾(特任助教)、丹羽國祥(特任研究員)、周翔宇(D1)、塩田光司(M2)、井上雅斗(M1)、森下和浩(B4)

グループ概要

ー私達のグループは,今年より新しく名黒グループからひっそりと発足しました— (2009年度 梅田グループ紹介文より引用).
 本グループヘッドの渡邊が一條研の門を叩いたのは2009年.名黒グループから発足したばかりの梅田グループに,唯一のグループ員として所属することになりました.その1年後,師匠の卒業に伴い,必然的に名黒グループへと異動.それから5年は矢の如く,とうとう自身が師匠と類似した状況になりました.さらにこの度は,同じく名黒グループから異動となったD2の丹羽,今年度より関水研から異動してきたM1の周,一條研に配属となったB4の塩田をグループ員とする,総勢4名の本格的な体制です.グループヘッドですらポスドク1年目であり,至らない点も多々あるとは思いますが,一條研の現・最年少グループとして,”とりあえず若さ(主に周,塩田.渡邊には無い)を武器にがんばっていこう” (2005年度 名黒グループ紹介文より改変)と思っている次第です.
 また,現在の一條研において最小グループにもなりますが,逆に少人数である方が,特に修士課程までの学生にとっては望ましい環境であると考えております.これは,研究の”け”の字も知らない4年生の時,D3の梅田先輩に実験計画・操作・結果の解釈に至るまで直接指導して頂き,圧倒されながらも博士レベルの研究者を文字通り隣で見ることができた,渡邊自身の経験に基づくものです.一方で,博士課程の学生にとっては,一人前の研究者となるためにも,過度な指導は望ましくありません.大所帯の名黒グループ所属時には,自由な発想の下に研究を進めさせて頂きましたが,研究が発散しそうになると,名黒先生の適切なsuggestionによる軌道修正がありました.ポスドク1年目のグループヘッドには,かなりの高等テクニックではありますが,是非とも見習いたいところです.
 以上,本グループは,新しい技術・内容を取り入れながらも,一條研に脈々と伝わる良き伝統を受け継ぎ,先駆的な研究を目指しています.

研究概要

 グループ共通のテーマとして「浸透圧ストレスによるASK3の活性変化制御機構の解明」を掲げて研究しております.これは渡邊,丹羽が名黒グループ所属時から取り組んでいるテーマであり,プロジェクト自体がグループとしてスピンオフした形になります.
 細胞にとって細胞外の浸透圧変化は,水の流出入に伴い,強制的に体積を変化させる甚大なストレスです (=浸透圧ストレス).細胞はこのようなストレスに適応するため,様々な応答を示しますが,そのためにはストレス自体を認識するシステムを備えている必要があります.その上,浸透圧ストレスの場合,単にストレスだと認識するだけでは不十分で,定常状態よりも低くなったのか,高くなったのか,方向性をもって認識しなければなりません.興味深いことに,ASK3は低浸透圧ストレスでは活性化し,高浸透圧ストレスでは不活性化することが明らかになりました (Naguro, I. et al. Nat. Commun. 2012).つまり,ASK3は方向性のある浸透圧ストレスに対して,方向性をもって応答できるということを意味しており,細胞が浸透圧ストレスを認識して応答する上で,非常に適した分子だと推測されます (この推測が正しいことを証明するデータが,最近ようやく得られてきました).
 一方,浸透圧ストレスによって,ASK3の活性変化がどのようにして引き起こされるのか,その分子機構は全く明らかになっていません.そもそも,根本的な現象にも関わらず,哺乳類細胞が浸透圧ストレスを認識する分子機構でさえ,不明な点が多いのが現状です.そこで我々は,ASK3を起点として,より一般に浸透圧ストレスを認識するセンサー分子の同定も視野に入れながら,ASK3の活性を制御する上流分子を網羅的に同定することを試みました (詳細は2009/2013年度 名黒グループ紹介文参照).結果,多くの興味深い候補分子を得ることに成功しましたが,本当に大変なのはここからで,得られた候補分子がどのようにASK3の活性制御に関わっているのか解明しなければなりません.かなりの歳月を割いてゴリゴリ解析を進めてきましたが,高浸透圧ストレスによるASK3不活性化の制御機構は,ようやく報告できる段階にまでなりました.
 ただ,解明できたのは一部分に過ぎず,全貌の解明に向け,引き続き研究を行っています.また,候補分子を同定する際,siRNAを利用して標的タンパク質の発現を抑制しましたが,この方法では発現抑制しにくいタンパク質の存在も知られています.そこで,このようなsiRNAの欠点を補うべく,最近話題のCRISPR-Cas9システムの技術導入も現在遂行中です.
 以上,一見薬学というよりも基礎的な生物学に近い研究内容ではありますが,ASK3を持たないマウスが高血圧症状を示すことは(Naguro, I. et al. Nat. Commun. 2012),ASK3の活性制御機構の異常によって高血圧症状になり得る可能性を秘めており,本研究は,新規の高血圧治療戦略につながる可能性を秘めるという意味でも重要だと考えております.また,浸透圧ストレスは非常に根本的なストレスであるが故に,様々な現象にも波及する可能性を有しており,各自が責任を持って解析している分子から派生して,腎臓以外で発現しているASK3の役割などにも発展できればと思っております.