メンバー

服部一輝(助教)、菅原祥(D2)、Ran Cheng(D1)、坂内千尋(D1)、若月大晃(M2)、高柳早希(M1)

研究プロジェクト

 当研究室では長年ASKファミリー分子に注目して研究を行ってきましたが、我々は特に、ASKファミリーが生体内の“どこで”、“どんなタイミングで”、“なんのために”機能しているかを考えています。ASK1、ASK2、ASK3はそれぞれ特徴的な組織発現分布を示すのですが、それぞれの分子が特定の場所でどのような機能をどのようなメカニズムで発揮しているか、不明点が多く残されています [1]。

 最近我々が特に注目をしている場は脂肪組織です。脂肪組織というと、エネルギー貯蔵を主な目的とする「白色脂肪組織」のことが思い浮かぶかと思いますが、生体内には「褐色脂肪組織」と呼ばれるものも存在します。褐色脂肪組織は白色脂肪組織とは異なり、エネルギーを消費する器官であると考えられています。そのため、褐色脂肪細胞を活性化させたり、褐色脂肪細胞の数を増やしたりすることが、ある種の代謝性疾患の治療戦略となりうると考えられています。最近我々は、この褐色脂肪細胞が未分化な細胞から成熟した細胞に分化する段階で、ASK1が重要な機能を発揮することを明らかにしました [2]。このASK1の機能というものは、個体全体の代謝恒常性維持に寄与するものであり、ASK1の新たな存在意義を示すことができたといえます。

 

 この他にも、ASKファミリーの他の臓器での新たな機能を解析するとともに、ASKファミリーがどのように活性化されるか、分解されるか、他の分子にどのような働きかけをするか、分子生物学的、生化学的な手法を用いて解析を行っています。また、ASKファミリーを基盤とする ”分子ベース” の解析のみならず、脂肪細胞の新たな機能探索などの ”現象ベース” の解析にも取り組んでいきたいと考えているところです。

 脂肪組織の解析の他にも、我々は新たな細胞死メカニズムにも注目しています。世界的に行われてきた長年にわたる解析から、「細胞死」は様々な種類に分類されてきました。しかしながら、数多く定義された「制御された細胞死」の分子基盤の多くはよく分かっていません。それぞれの細胞死は、それぞれ特異的な疾患との関連が示唆されていることから、各細胞死のメカニズムを明らかにすることには意義があると考えられます。我々の解析結果がその一翼を担えることを願っています。

 長年の研究から数多くの実験結果を得てきていますが、生体内、細胞内で真に働いている現象を多面的な視点で捉えていきたいと思います。

[1] Sakauchi, C., Wakatsuki, H., Ichijo, H., and Hattori, K. (2017). Pleiotropic properties of ASK1. Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - General Subjects 1861, 3030–3038.
[2] Hattori, K., Naguro, I., Okabe, K., Funatsu, T., Furutani, S., Takeda, K., and Ichijo, H. (2016). ASK1 signalling regulates brown and beige adipocyte function. Nat Commun 7, 11158.