国際交流
研究科長・学部長の挨拶
研究科長・学部長よりメッセージ 浦野 泰照
東京大学薬学部は、明治6年(1873年)に第一大学区医学校製薬学科が設置された時を源流とし、昨年令和5年(2023年)に150周年を迎えました。昭和33年(1958年)に東京大学薬学部として医学部から独立して新たな歩みがはじまり、平成18年(2006年)から4年制の薬科学科、6年制教育の薬学科を併設する現在の形になっています。
最先端の研究、教育を行う大学院組織は、大学院重点化を経て、現在は本学薬学科などの6年制大学卒業者が入学する薬学博士課程と、薬科学科などの4年生大学卒業者が入学する修士課程、後期博士課程からなる組織として運営され、他大学、他専攻からの入学者も数多く存在する大学院となっています。
薬学部・薬学系研究科は、800人ほどの構成員からなる東京大学の中では小さな部局の一つです。私も本部局卒業生の一人ですが、学部時代の多くの授業で、「薬学部に進学したからには、国民の健康に奉仕することを常に考えなさい」という言葉を聞いたことを、特に印象深く覚えています。従来は治療が難しかった疾患を克服し、より豊かで、安全、安心な社会を実現することに貢献しなさいという言葉ですが、あまりに多くの先生からこの言葉を聞いたため、この考え方が体の芯まで擦り込まれてしまい、結果として私が研究者として研究の方向性に迷った時に、幾度となく登場する羅針盤的な教えとなりました。
疾患の克服を実現するためには、その疾患要因を明らかにし、それに対応する薬を設計・開発するための基礎研究はもちろんのこと、開発した薬を如何に患者さんに安心して使ってもらい、国家として持続可能性が高い体制を作るかという臨床、社会薬学面での応用研究まで、幅広い分野の研究を糾合する必要があります。さらに近年、新たな原理に基づく「薬」が数多く誕生し、100年以上の歴史があるアスピリンなどの有機小分子から、抗体などをベースとする生物製剤、mRNAワクチンなどの核酸製剤、さらにはゲノム編集技術を用いた細胞製剤まで、多分野に渡る研究をシームレスに進める必要性が高まっています。当部局は開学以来、生物系、化学系、物理系、臨床系の最先端研究を行うバラエティに富んだ研究室を有してきており、一つの部局内で分野横断的な研究を密に行う事ができることが最大の強みです。「国民の健康に奉仕する」大学としての価値を高める一つの重要な部局として、今後も私たちの独自の研究と教育を強く押し進めていきたいと思っております。
東京大学薬学系研究科長・薬学部長 浦野 泰照
掲載日:2024年4月1日