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2023/05/23生命物理化学教室の徳永裕二 助教と竹内恒 教授らの共同研究グループが、サブテラヘルツ波が⽔とタンパク質のミクロな混合を加速することを発見
産業技術総合研究所細胞分⼦⼯学研究部⾨の今清⽔正彦主任研究員、ナノ材料研究部⾨の杉⼭順⼀主任研究員、分析計測標準研究部⾨の⽥中真⼈研究グループ⻑および佐藤⼤輔主任研究員、東京大学大学院薬学系研究科の徳永裕二助教と竹内恒教授、および筑波⼤学数理物質系の菱⽥真史助教(研究当時、現:東京理科⼤学理学部准教授)らの研究グループは、サブテラヘルツ波照射下のマイクロ波帯誘電率測定法、NMR分光法、およびテラヘルツ分光法を用いた総合的な解析から、タンパク質溶液へのサブテラヘルツ波照射により、タンパク質の周囲にある水分子集団の運動を励起し、水和状態を変化させる現象の観測に成功しました。
また、この変化は、溶解初期のネットワークが崩れた⽔を含む⽔和構造が、疎⽔性の⾼い領域を含めて、ネットワークが強化された⽔和構造に移行するものであることを示しました。
本研究成果は2023年5月22日付で科学雑誌Nature Communications(オンライン版)に掲載されました。
掲載雑誌:Nature Communications
論文題目:Nonthermal acceleration of protein hydration by sub-terahertz irradiation
著者:Jun-ichi Sugiyama, Yuji Tokunaga, Mafumi Hishida, Masahito Tanaka, Koh Takeuchi, Daisuke Satoh, Masahiko Imashimizu
DOI番号:10.1038/s41467-023-38462-0
プレスリリースはこちら
発表概要
水の中のタンパク質は水和水に覆われて形や動きやすさを保つことで機能を発揮します。タンパク質の表面は形状や疎水性・親水性の多様性に富むため、水和構造が形成される時間や水分子の運動性は場所ごとに不均一であり、このことがタンパク質機能の特性を決める要因になると考えられています。したがって、タンパク質の機能の物理的、化学的な仕組みを理解し、物質⽣産などに活⽤するためには、⽔和の不均⼀性を理解することが必要ですが、観測の難しさが課題となっています。
今回、産業技術総合研究所細胞分⼦⼯学研究部⾨の今清⽔正彦主任研究員、ナノ材料研究部⾨の杉⼭順⼀主任研究員、分析計測標準研究部⾨の⽥中真⼈研究グループ⻑および佐藤⼤輔主任研究員、東京大学大学院薬学系研究科の徳永裕二助教と竹内恒教授、および筑波⼤学数理物質系の菱⽥真史助教(研究当時、現:東京理科⼤学理学部准教授)らの研究グループは、サブテラヘルツ波照射中での⾼感度なマイクロ波帯の誘電率測定技術を開発することで、サブテラヘルツ領域の電磁波の照射により、タンパク質の周囲にある⽔分⼦集団の運動を励起し、⽔和状態を変化させる現象の観測に成功しました。NMR分光法とテラヘルツ分光法を用いた総合的な解析から、この観測の妥当性を検証するとともに、タンパク質溶液へのサブテラヘルツ波照射により、溶解初期のネットワークが崩れた⽔を含む⽔和構造から、疎⽔性の⾼い領域を含めて、ネットワークが強化された⽔和構造に変化することを⽰唆しました。
本研究成果は、サブテラヘルツ波の照射により、酵素を改変せずにより⾼速に酵素の機能を⾼める技術や、⽔和の障害によるタンパク質異常疾患に対する医療技術、飲⾷品の熟成などの、次世代の生物機能改変技術の開発につながると期待されます。
また、この変化は、溶解初期のネットワークが崩れた⽔を含む⽔和構造が、疎⽔性の⾼い領域を含めて、ネットワークが強化された⽔和構造に移行するものであることを示しました。
本研究成果は2023年5月22日付で科学雑誌Nature Communications(オンライン版)に掲載されました。
掲載雑誌:Nature Communications
論文題目:Nonthermal acceleration of protein hydration by sub-terahertz irradiation
著者:Jun-ichi Sugiyama, Yuji Tokunaga, Mafumi Hishida, Masahito Tanaka, Koh Takeuchi, Daisuke Satoh, Masahiko Imashimizu
DOI番号:10.1038/s41467-023-38462-0
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発表概要
水の中のタンパク質は水和水に覆われて形や動きやすさを保つことで機能を発揮します。タンパク質の表面は形状や疎水性・親水性の多様性に富むため、水和構造が形成される時間や水分子の運動性は場所ごとに不均一であり、このことがタンパク質機能の特性を決める要因になると考えられています。したがって、タンパク質の機能の物理的、化学的な仕組みを理解し、物質⽣産などに活⽤するためには、⽔和の不均⼀性を理解することが必要ですが、観測の難しさが課題となっています。
今回、産業技術総合研究所細胞分⼦⼯学研究部⾨の今清⽔正彦主任研究員、ナノ材料研究部⾨の杉⼭順⼀主任研究員、分析計測標準研究部⾨の⽥中真⼈研究グループ⻑および佐藤⼤輔主任研究員、東京大学大学院薬学系研究科の徳永裕二助教と竹内恒教授、および筑波⼤学数理物質系の菱⽥真史助教(研究当時、現:東京理科⼤学理学部准教授)らの研究グループは、サブテラヘルツ波照射中での⾼感度なマイクロ波帯の誘電率測定技術を開発することで、サブテラヘルツ領域の電磁波の照射により、タンパク質の周囲にある⽔分⼦集団の運動を励起し、⽔和状態を変化させる現象の観測に成功しました。NMR分光法とテラヘルツ分光法を用いた総合的な解析から、この観測の妥当性を検証するとともに、タンパク質溶液へのサブテラヘルツ波照射により、溶解初期のネットワークが崩れた⽔を含む⽔和構造から、疎⽔性の⾼い領域を含めて、ネットワークが強化された⽔和構造に変化することを⽰唆しました。
本研究成果は、サブテラヘルツ波の照射により、酵素を改変せずにより⾼速に酵素の機能を⾼める技術や、⽔和の障害によるタンパク質異常疾患に対する医療技術、飲⾷品の熟成などの、次世代の生物機能改変技術の開発につながると期待されます。
- 2023/05/23
- プレスリリース 生命物理化学教室の徳永裕二 助教と竹内恒 教授らの共同研究グループが、サブテラヘルツ波が⽔とタンパク質のミクロな混合を加速することを発見
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