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2023/10/27有機合成化学教室の藤村亜紀子 博士研究員、川島茂裕 准教授、金井求 教授らの研究グループが、ペプチドを低分子に機能変換するアダプター分子の開発に成功
有機合成化学教室の藤村亜紀子 博士研究員(研究当時)、野崎多実子 大学院生、寺田周平大学院生、東屋勇都 大学院生、石黒伸茂 博士研究員(研究当時)、上村祐悟 大学院生、山次健三 助教(現 千葉大学大学院薬学研究院 教授)、川島茂裕 准教授、金井求 教授らの研究グループは、ペプチドを低分子に機能変換するアダプター分子の開発に成功しました。本研究成果は2023年10月25日付でACS Central Scienceに掲載されました。
掲載雑誌:ACS Central Science
論文題目:Designer adaptor proteins for functional conversion of peptides to small-molecule ligands toward in-cell catalytic protein modification
著者:Akiko Fujimura, Hisashi Ishida, Tamiko Nozaki, Shuhei Terada, Yuto Azumaya, Tadashi Ishiguro, Yugo R. Kamimura, Tomoya Kujirai, Hitoshi Kurumizaka, Hidetoshi Kono, Kenzo Yamatsugu, Shigehiro A. Kawashima, & Motomu Kanai
DOI番号: 10.1021/acscentsci.3c00930
論文へのリンク: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acscentsci.3c00930
発表概要
ペプチドは、従来の低分子医薬品やバイオ医薬品に次ぐ、新たな創薬モダリティとして注目されています。また、ある種のペプチドは標的のタンパク質に選択的に結合できるため、蛍光色素や化学触媒などの機能性低分子を標的タンパク質に誘導するリガンドとしても有用です。しかし、一般にペプチドは低分子化合物に比べて細胞膜透過性や細胞内安定性が低く、その有用性はしばしば限定的でした。
今回、本研究グループは、標的タンパク質に結合するペプチドをアミノ酸配列に挿入した人工タンパク質である、ユニバーサルアダプター分子PLIED(Peptide Lingand-Inserted eDHFR)を開発しました。染色体を構成するタンパク質であるヒストンに結合するペプチドを挿入したPLIEDを細胞内で発現させ、培養液中に低分子ヒストンアシル化触媒を加えると、細胞内でヒストン-PLIED-触媒の三成分複合体が形成され、アシル化剤の添加によりヒストンの特定の位置を人工的にアシル化することができました。ヒストンアシル化は一般に、転写を促進する重要なエピゲノムです。ペプチドを挿入する位置がPLIEDの機能に重要で、タンパク質構造に基づく分子動力学シミュレーションの支援により分子デザインを行いました。この手法は一般性が高く、がんに関わるMDM2タンパク質を標的としたPLIEDを設計・発現させると、MDM2の特定位置に翻訳後修飾を導入することも可能でした。
本成果は、細胞膜を透過しないペプチドリガンドを低分子に機能変換することを可能にし、ペプチドの有用性を高めることで様々な基礎研究および創薬研究の発展に貢献できます。
掲載雑誌:ACS Central Science
論文題目:Designer adaptor proteins for functional conversion of peptides to small-molecule ligands toward in-cell catalytic protein modification
著者:Akiko Fujimura, Hisashi Ishida, Tamiko Nozaki, Shuhei Terada, Yuto Azumaya, Tadashi Ishiguro, Yugo R. Kamimura, Tomoya Kujirai, Hitoshi Kurumizaka, Hidetoshi Kono, Kenzo Yamatsugu, Shigehiro A. Kawashima, & Motomu Kanai
DOI番号: 10.1021/acscentsci.3c00930
論文へのリンク: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acscentsci.3c00930
発表概要
ペプチドは、従来の低分子医薬品やバイオ医薬品に次ぐ、新たな創薬モダリティとして注目されています。また、ある種のペプチドは標的のタンパク質に選択的に結合できるため、蛍光色素や化学触媒などの機能性低分子を標的タンパク質に誘導するリガンドとしても有用です。しかし、一般にペプチドは低分子化合物に比べて細胞膜透過性や細胞内安定性が低く、その有用性はしばしば限定的でした。
今回、本研究グループは、標的タンパク質に結合するペプチドをアミノ酸配列に挿入した人工タンパク質である、ユニバーサルアダプター分子PLIED(Peptide Lingand-Inserted eDHFR)を開発しました。染色体を構成するタンパク質であるヒストンに結合するペプチドを挿入したPLIEDを細胞内で発現させ、培養液中に低分子ヒストンアシル化触媒を加えると、細胞内でヒストン-PLIED-触媒の三成分複合体が形成され、アシル化剤の添加によりヒストンの特定の位置を人工的にアシル化することができました。ヒストンアシル化は一般に、転写を促進する重要なエピゲノムです。ペプチドを挿入する位置がPLIEDの機能に重要で、タンパク質構造に基づく分子動力学シミュレーションの支援により分子デザインを行いました。この手法は一般性が高く、がんに関わるMDM2タンパク質を標的としたPLIEDを設計・発現させると、MDM2の特定位置に翻訳後修飾を導入することも可能でした。
本成果は、細胞膜を透過しないペプチドリガンドを低分子に機能変換することを可能にし、ペプチドの有用性を高めることで様々な基礎研究および創薬研究の発展に貢献できます。
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